|
そもそもヒトはいつ頃からリバース・スピーチを発し始めるのだろうか?
言葉の習得と同時にリバース・スピーチを発するものなのだろうか?
通常、赤ちゃんは生後1年ぐらいまでは言葉を話せず、
泣き声をあげる程度でしか親への意思表示を行えないと我々大人は理解している。
リバース・スピーチの生成も同様にして発展していくものなのか、
オーツ氏はその検証に興味を抱くようになっていた。
そして、オーツ氏にその検証の機会が与えられたのは、研究を始めて4年目の1987年だった。
その年、オーツ氏は双子の娘を授かったのだ。
日頃から自身の発言を実験台に録音を繰り返していたのだが、
それをきっかけに、その矛先はわが子にも向けられるようになった。
もちろん、生まれてまもない赤ちゃんは、泣くことはあっても言葉を発することはない。
それは分かっていたが、オーツ氏は根気よくわが子の泣き声や意味不明な幼児特有の発声を
毎日数時間、何年にも渡って録音しては逆再生を続けた。
最初の数ヵ月間の努力はまったくの徒労だったが、それでも予想外に早いある時期から、
反転メッセージが現れるようになった。
普通では理解できない赤ちゃんの発声を逆再生すると、
確実に言葉を構成している事実を発見したのだ。
それは生後4ヶ月頃のことであった。
オーツ家では家族4人でちょっとしたゲームで遊んでいて、
子供たちはゆりかごの中で泣いていた。
普段の泣き声に混じって、少し変わった泣き声が聞こえた。
その個所を逆再生してみると、はっきりと【マミー、マミー(Mummy, Mummy)】
という言葉を生み出していた。
その一週間後には【ハロー(Hullo)】というリバース・スピーチが発見された。
その後は、【お腹がすいた(hungry)】【おむつ(nappy)】【助けて(help)】
といった単語が次々と現れるようになった。
そして、生後7ヶ月頃が経つと、双子の一人から2単語で構成される文章が
リバース・スピーチとして発せられた。
表で聞こえた音は「イー アー ガガ(Eee ar gaga)」といった意味不明なものであったが、
逆再生して聞いてみると、【何これ?(What's that?)】であった。
2人は満一歳を迎えるまでの間に、3単語や4単語から構成される文章を
リバース・スピーチで発するようになったが、まだ表のモードでは言葉を話せないままであった。
生後13ヶ月の時、オーツ氏の娘がバスタブの中でコップを持ち上げられずにいた際、
幼児特有の意味不明な声を発した。
逆再生すると、【デイヴィッド、助けて(David, help me!)】となっていた。
また、14ヶ月の時、娘を別の部屋に連れて行った際、意味不明の発声の裏では、
【私は今ここに来る(I now come here.)】というリバース・スピーチが現れた。
こんな例もあった。
うなるような声しか出せない13歳の知恵遅れの娘をもった母親が、
自分の娘が発した意味不明の声を30分のテープに収めて持ってきたのだ。
オーツ氏はその意味不明な声を逆再生してみると、
【マミー、愛してる(Mummy, I love you)】とはっきりと現れていたのだ。
また、オーツ氏は耳の不自由な子供たちの発する意味不明な声からも
リバース・スピーチが現れることを確認している。
子供たちは予想外に早く意識を発達させていて、オーツ氏を驚かせたケースがある。
オーツ氏の娘が2歳の誕生日を迎えた時、彼は妻と不仲となっていたことに加えて、
別居してアメリカに引っ越すことになった。
その際、録音した娘の声を逆再生すると、すでに娘は無意識のレベルでオーツ夫妻の
結婚生活の破綻を理解しており、次のようなメッセージが現れていたのだ。
「パパと話ができなくなる」
「私は悲しい」
「ママ、助けて」
「パパは愛してくれている」
「パパは行ってしまう」
赤ちゃんのリバース・スピーチは極めて興味深い。
なぜなら、大人の場合は表で発する言葉でも裏で発せられる言葉でも聴覚的に意味を為しているのだが、
赤ちゃんの場合は、表で発する言葉が意味を為していなくても
裏で発せられる言葉は意味を為しているからである。
これは、本人の自覚の有無にかかわらず、逆再生すると意味を為すメッセージが生成されるように、
赤ちゃんは表においては意味不明な音声を反転して発していることを意味している。
このことから、ヒトはまず言葉を逆方向に発することを覚え、
その後に正常のモードで発することができるようになるのが分かる。
そして、驚くべきことに、赤ちゃんはまず両親が発するリバース・スピーチ(本音)を受け止めて、
自らのリバース・スピーチ生成に役立てている。
さらに、おそらくヒトの脳は表と裏の二つのメッセージで同時に
コミュニケーションを交わすように声を組み立てると考えられるとオーツ氏は言うのだ。
⇒ RSヒーリング&自己啓発 (次項)
|
|