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通常、歌詞の含まれる楽曲やヒトが発する言葉をレコードやテープ、CD他、電子媒体等に
録音し、録音された音声を逆再生してみても、
聞こえるものと言えば、意味不明の音(おん)の羅列となる。
個人差はあるとはいえ、それらはあまり耳に心地よいとは言えず、ノイズと受け止められる…。
おそらく、世界中の人々はそのように信じてきた。
だが、実際のところ、注意深く聞いてみると、単語や節、時には文章ですら知的に構成されて、
秩序だった言葉が聞き取れるケースがあることが分かったのだ。
このように、逆再生して、聞き取れる言葉(音声)が、「リバース・スピーチ」である。
発明家のトーマス・エジソン(右写真)は、自らの発明品であるレコード・プレーヤー(蓄音機)を逆転再生して、
音楽を異なった趣で味わえることを発見していたため、録音された音楽や声の逆再生自体の歴史は古いものである。
しかし、秩序だった言葉が人為的ではなく、自然に現れる現象に最初に気付いたのは、
オーストラリアのデイヴィッド・ジョン・オーツ氏(左写真)であった。
1984年のはじめ頃、オーツ氏は、浮浪児(ストリート・チルドレン)のための社会復帰施設を
運営していたが、ある日、数人のティーンエイジャーが奇妙なことを口にして、
怖がっていたのを目の当たりにした。
子供たちが言うには、ロック音楽が収録されたレコードを通じて、悪魔が自分たちに
逆方向に語りかけてくるのが聞こえるとのことだった。
1960年代後半から、ビートルズをはじめとしたロック音楽家たちは、
「バックマスキング」と呼ばれるレコーディング技術を用いて、
逆再生してはじめて聞き取れる「隠しメッセージ」を意図的に刷り込む録音を行っていた。
そのため、反転メッセージがバックマスキングで意図的に刷り込まれたものなら、
何も怖がる必要はないはず…。
そう考えたオーツ氏は、当初は馬鹿げたこととして、ただ懐疑的に感じていた。
だが、ロック音楽にはリスナーの知らないところで悪魔的な隠しメッセージが刷り込まれていて、
若者を潜在意識(サブリミナル)で呪い、セックス、ドラッグ、犯罪へと向かわせているという噂は世界的に広がっていた。
のちに触れるが、アメリカでは1980年代から議員、宗教指導者、学者らを交えて、大論争が繰り広げられたのだ。
そこで、オーツ氏は好奇心を抑え込めず、自ら調査に乗り出し、実際にロック音楽を逆再生して、
反転メッセージが自然に現れてしまう現象を発見し、リバース・スピーチ(RS)と名付けたのであった。
【日本におけるリバース・スピーチ】
オーツ氏が著書『リバース・スピーチ(Reverse Speech)』(1996年)を記してまもなく、
日本では、水守啓(ケイ・ミズモリ)がマスコミへの紹介を試みる。
活字になって紹介されたのはその数年後、オーツ氏への取材を経て、
学研『ムー』誌2001年4月号にて実現。以来、自身のホームページをはじめ、
著書『超不都合な科学的真実』(2007年11月徳間書店刊)や
雑誌『SPACESHIP vol.3』(2008年9月ナチュラルスピリット刊)等で最新事例をレポート。
近年、日本語リバース・スピーチも自ら発見・分析し、今日に至る。
⇒ ロック音楽は若者を呪う? (次項)
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