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映画『宇宙戦争』公開の真意とは? 学研「ムー」2005年7月号掲載(改定前原稿) |
映画『宇宙戦争』の公開
今月29日、スティーブン・スピルバーグ監督による映画『宇宙戦争』が世界同時公開される。1898年に発表されたH・G・ウェルズのSF小説『The War of the Worlds』(邦題『宇宙戦争』)を、現代へ置き換えて製作されたものだ。スピルバーグ監督作品としては最高の製作費1億3300万ドル(約140億円)が投じられた超大作であり、大物俳優のトム・クルーズが主演という点でも今夏最も注目すべき作品と言えるだろう。
スピルバーグ監督は、1978年に『未知との遭遇』、1982年に『E.T.』を発表し、人類と地球外生命体との心の交流を描くファンタジーを作った。また、1977年、80年、83年にジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ』シリーズが公開され、1985年にはロン・ハワード監督の『コクーン』が公開されるなど、当時は、宇宙人との交流や宇宙文明に関して好意的に描かれる状況があった。その先駆者とも言えたのが、スピルバーグ監督であった。
ところが、今回の『宇宙戦争』では、敵意ある恐ろしい異星人達が地球を侵略してくるシナリオとなっている。スピルバーグ監督と言えば、『インディー・ジョーンズ』のようなSFアドベンチャーから、シリアスな『アミスタッド』や『プライベート・ライアン』まで、幅広く才能を発揮している人物だが、なぜこの時期に『未知との遭遇』や『E.T.』とはまったく毛色の異なる映画を公開することになったのか? しかも、(当時としては斬新な傑作であったとしても)100年以上前の古臭いSF小説を原作に利用して・・・。もちろん、本稿執筆段階では、筆者は同映画を観ることが出来ていないが為に詳細は分らないのだが、少なくとも70年代後半から80年代までの雰囲気とは、圧倒的に異なる映画のように思われるのだ。
宇宙人とのコンタクトの始まり
70年代後半から宇宙人との交流を好意的に取り上げる映画が増えた背景には、故ジョン・F・ケネディ元大統領(以下JFK)の意志を引き継いだ、影の政府関係者達が関わっていたという説がある。JFKは、友好的な宇宙人達が存在し、地球を訪れており、その事実をアメリカ市民に公表しようとしていたと言われている(後に詳述)。ところが、暗殺により宇宙人情報の公開が阻止されてしまったために、政府内部の一部の者達が、密かに極秘文書を持ち出して、映画監督や作家達にその情報を提供するようになったという。
話を進めるために、ここでアメリカにおける宇宙人との遭遇史を振り返ってみたい。まず、宇宙人と人類との遭遇事件として最初に話題にされるのが、1947年7月4日に米ニューメキシコ州ロズウェル近郊で正体不明の飛行物体(UFO)が墜落したとされる、通称「ロズウェル事件」である。事件の全貌に関しては、ケヴィン・D・ランドル氏とドナルド・R・シュミット氏によって1994年に発表された『The Truth About the UFO Crash at Roswell』(邦題『ロズウェルに墜ちたUFO』/徳間書店刊)が詳しいが、簡単にその経緯を振り返ってみよう。
1947年7月8日、ロズウェル陸軍航空基地の広報担当官ウォルター・ホート中尉は「空飛ぶ円盤を回収した」と発表、ニュースはたちまち世界中に広まった。当時の現地新聞『ロズウェル・デイリーレコード』紙によると、「同基地の情報将校ジェシー・マーセル少佐が空飛ぶ円盤をロズウェル近くの牧場で回収したが、詳細については不明」と掲載。
「円盤」の残骸は、マーセル少佐の同行の下、即座にテキサス州フォートワース空軍基地にB-29で輸送された。その日の夜、当基地のロジャー・ラメイ准将は記者会見を行い「回収されたのは気象観測用気球であった」と説明し、記者団に回収した残骸の一部を見せて写真を撮らせた。
翌日の『ロズウェル・デイリーレコード』紙の見出しは一転して「ラメイ准将がロズウェルの円盤を否定、マーセル少佐によって回収された物体を調べたところ、気象観測用気球だったことがわかった」と掲載した。
当時はそれで表面的には一件落着となったが、1978年、マーセル元少佐が「たしかに私は1947年に、ロズウェルの近くでUFOの残骸を回収した」と証言して以来、新たな証言が続々と出てきた。
UFO墜落を最初から目撃し、宇宙人の死体をも目の当たりにしたカップル。生きた宇宙人が軍関係者とともに病院へ歩いていく姿を目撃し、その目撃を口止めされたペンキ塗り職人。不思議な残骸を目撃し、子供用棺桶について尋ねられると同時に、それを口止めされた葬儀屋の経営者など、これまでの証言者は50余人に上る。
それらを総合すると、ロズウェルに墜落したのは間違いなく空飛ぶ円盤で、4人(5人という証言もある)の小さな宇宙人が死体および生きたまま回収されたが、ラメイ准将は、UFOの残骸を気象観測用気球にすり替えて記者団に公開したというものだった。
米当局の矛盾した説明
米当局による説明には常に矛盾に満ちていた。
ニューメキシコ州の下院議員スティーブン・シフは、ロズウェル事件が世間で注目を浴びるにしたがって、市民の声に応えるべく1993年、国防総省やホワイトハウスに事件の真相公開を求めていた。得られた回答と言えば、すべての情報は国立公文書館にあるという素っ気ないものであり、実際に調べてみても、UFOの墜落事件はおろか、気球墜落事件に関する資料も何一つ発見されなかった。そこで、シフ議員は翌年2月、GAO(会計監査院)にロズウェル事件の詳細を調査、報告する手段に出たのである。
GAOは連邦予算の支出や政府機関の活動を監査し、それを議会に報告するとともに、議会の委員会の要請を受けて調査活動も行う議会の付属機関である。もしロズウェル事件で米軍が現場に人員を派遣して何らかの活動を行ったなら、活動に必要とされた出費が記録として残っているはずである(ブラック・バジェットを使用してGAOの追求を逃れることも十分に可能だが)。
こうした背景もあり、1995年3月29日、UFO研究団体のORTKは首都ワシントンDCのGAOにおいて抗議のデモを行った。ORTKは1992年に結成されて以来、ホワイトハウスや国防総省などでロズウェル事件の真相公開を柱にデモを繰り返し、当時マスコミにも活動が注目されてきた。つまり、ORTKはシフ議員のGAOに対する要求を支持し、その報告を促すための行動を起こした訳である。
そして、ORTKによるデモの影響かどうか定かではないが、当時国防総省のコロネル・D・ケネットは、1994年9月8日の定例記者会見において、ロズウェル事件に関する半世紀の沈黙を破った。
「UFO研究家たちは、1947年に地球外起源の宇宙船とその同乗者らがニューメキシコ州のロズウェル近くで回収されたと言っているが、空軍の調査では何の事実も見つけ出せなかったし、ロスウェル事件がUFOと関わっているという情報も隠蔽工作もなかった。
当時の記録の徹底的な調査と、現場近くで発見された残骸の回収に立ち会った者からインタビューを通して得られた情報は、一貫して当時の空軍が秘密に進めていたプロジェクトに使われていた軍事用気球についてだった」
この説明は、明らかに一貫性に欠き、かつ誤りを含んでいた。
当初、ロズウェル陸軍航空基地の広報担当官ウォルター・ホート中尉は、「第509爆撃部隊が、幸運にも“フライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)”を入手した」と発表し、地元の新聞に一面トップで報道されたが、その数時間後に第8空軍司令官ロジャー・ラメイ准将によって“気象観測用気球”だったと慌てて訂正されているのである。
つまり、“気象観測用気球”とは明らかに異なる“軍事用気球”と、1994年9月の時点になって唐突に変えられ、ご丁寧にも“一貫して”という矛盾した表現も付け加えられたのである。このような国防総省の説明を前に、もう少しスマートな嘘をつけないものかと当時感じたのは、筆者ばかりではなかっただろう。
そして、1995年夏、ようやくGAOがシフ議員の手元に計20ページに及ぶ調査結果を送ってきた。同年7月28日、彼はそれを一般に公開したが、そこで判明したことは、「ロズウェル陸軍航空基地における1945年3月から49年12月の間の記録文書が紛失もしくは破棄されている」こと、そして「航空基地から発進された通信記録のうち、1946年10月から49年12月の間の記録も破棄されている」ことであった。また、その記録が破棄されてから40年以上経過している事実も明らかとなった。
本来このような記録は永久保存されるべきものである。その点をシフ議員は、「それらは決して破棄されてはならない永久保存文書であるはずだ。GAOは誰がなぜそれらを破棄したのかまでは明らかにできなかった」と語っている。
結論として、シフ議員の言葉を借りれば、「少なくとも、陸軍がこのような努力(記録の破棄)をしたことで、墜落した飛行物体が決して気象観測用気球ではなかったことが分った」ことで、気象観測用と軍事用とに首尾一貫しない気球説に対しても、「その説明は当時採用されていた軍のセキュリティー方針の事実に決して合致するものではない」ことであった。
これで、様々な目撃証言、状況証拠に加え、証拠隠滅の事実が判明した。
隠蔽工作の理由は?
しかし、そもそもなぜこのように事件が隠蔽されてきたのだろうか?
当初、意外にもその理由は極めて単純なことであったのかもしれない。未知の飛行物体が身元不明の生命体を乗せて墜落したのである。詳細が分らない状況で、不正確な情報を一般市民に知らせることはパニックを引き起こす可能性もあり、それがしばらく差し控えられたとしても自然なことと思われるからだ。
実際、有名な話であるが、1938年10月30日、CBSラジオがハロウィン向けのある番組を放送したことにより、全米で大パニックが起こった。先に触れたH・G・ウェルズの『宇宙戦争』(原作)をもとに、オーソン・ウェルズとマーキュリー・シアターがラジオドラマ化したもので、火星人が襲来して、実在のあちこちの都市が攻撃されているという話が臨時ニュースの形で流されたのだ。番組の最初にこのことは断られていたのだが、途中から番組を聞き始めた人々は、現実の出来事と考え、大パニックにまで発展したのだ。(その点で、スピルバーグ監督が当原作をもとにした映画『宇宙戦争』をこの時期に公開することに、さらに深い意味がありそうにも思われる。)
さて、ロズウェル事件の数年後、UFO研究団体などによる調査や内部告発として表面化した機密文書から、米当局は回収した“生きた宇宙人”とコミュニケーションが図れるようになったとされ、ある陰謀説が浮上してきた。その説は、米政府が宇宙人によるアメリカ市民のアブダクション(誘拐)と人体実験を容認する見返りとして、彼らから高度なテクノロジーの供与を受けるというものであった。そのような宇宙人とのコミュニケーションの進展と背景から、政府はアメリカ市民を裏切るような形となり、もはや、宇宙人の存在を一般市民に公表することは不可能となり、隠蔽せざるを得ない状況が作られてきたというのだ。
因みに、なぜ宇宙人達は地球人に関心を持ち、人体実験を行うのかという点に関しては、次のように推測されている。彼らは自分達の惑星で戦争や環境破壊を体験したため、自らの遺伝子までをも操作して、劣悪な環境に耐えうる体に変化させていった。もともとは地球人と同様の肉体を持っていた彼らとしては、本来の姿を取り戻すべく、我々(の体)に極めて高い関心を抱いており、地球人との異種交配により、我々との共存・存続の道を探っているものと考えられたのだ。のちに触れるが、これはアメリカの学者達も支持した説である。そのようなことから、基本的に彼らは地球人に対して敵対意識は無く、むしろ、共存・繁栄を求めていると言われる。
1961年に大統領に就任したJFKは、そのような過去を知ることになり、思い悩んだ結果、宇宙人が存在することを一般市民に伝える義務があると感じたとされる。そして、月に宇宙人(基地)が存在することを確認する目的で、アポロ計画を積極的に打ち出したと言われている。しかし、月に存在すると言われた宇宙人(基地)を確認する前に、JFKが暗殺され、宇宙人情報の隠蔽方針が固まってくると、それに耐え切れない人々が現れたと同時に、宇宙に夢を託す人々が増えたのかもしれない。
60年代は、テレビドラマ『スタートレック』が登場し好評を得て、1968年にはスタンリー・キューブリック監督の『2001年: 宇宙の旅』がヒットした。そして、1970年代、何人もの映画監督達は、米軍の極秘文書のコピーが含まれた、差出人不明の郵便物を受け取ってきた。そのような極秘文書を受け取った一人である、ドキュメンタリー映画監督のリンダ・ハウ氏によると、その極秘文書には、UFO墜落事件以来、アメリカ政府は宇宙人と極秘に交流を取ってきた証拠が写真を含めて記されていたという。それは、スピルバーグ監督やルーカス監督達にも送られたはずであるという。そのような情報提供に触発されてか、70年代後半から、人類と宇宙人との交流を描く映画がポピュラーになっていった。
ケネディ大統領が暗殺されなければ、宇宙人情報は公開されていた!?
ここで、JFKの暗殺に関して少し振り返ってみよう。1963年11月22日、第35代米大統領ジョン・F・ケネディ(JFK)は遊説先のテキサス州ダラス市内をオープンカーでパレード中、ライフルで狙撃、暗殺された。容疑者として逮捕されたリー・ハーベイ・オズワルドは、道路わきのビル6階から単独でJFKを背後から狙撃したものと断定された。だが、その後、オズワルドは別の男に射殺されたばかりか、前方からも複数の銃弾を受けたと思われる映像も登場し、オズワルド単独犯行説には無理があると多くの人々が疑問を投げかけるようになった。
JFK暗殺にまつわる謀略説は、事件後すぐにも囁かれるようになったが、最も全米を騒がせたのが1991年であった。同年12月にオリバー・ストーン監督の映画『JFK』が公開されたからである。同作品では、アメリカ政府(ジョンソン大統領)、国防総省、CIA、FBI、軍需産業、マフィア達がからみ、政府と癒着した軍需産業やマフィア達の利益のために、JFKが邪魔な存在となり、暗殺されたことを匂わせるものであった。
すると、同作品に対して、『ワシントン・ポスト』紙や『ニューヨーク・タイムス』紙のような大手メディアまでが感情的な批判を行い、全米を二分させた。JFKが暗殺された理由は、これまで様々な憶測がなされてきたが、映画『JFK』はその真相に迫るものであったのだろう。
だが、JFK暗殺の背後に、映画『JFK』でも触れられなかった、さらなる理由が存在していたことも囁かれていた。それが、宇宙人情報の公開問題である。
一部のUFO研究家達や陰謀論者達の間では比較的有名な話であるが、JFKは暗殺される直前、宇宙人の存在を一般市民に公表するための草稿を書き上げていたと伝えられている。そして、その公表を嫌った勢力が、JFKの演説を阻止すべく暗殺したというものだ。
その説によれば、暗殺されたJFKを検死した医師の一人が、JFKのポケットの中から、予定されていた演説内容が書かれたメモを発見し、密かに隠し持っていたということから発覚した。だが、これまで、そのメモの具体的な内容や存在は公表されてきておらず、UFO研究家達による希望的な憶測として捉えられることが常であった。
ところが、2005年2月中旬、筆者はインターネット上で、その具体的な内容が記された記事を発見した。もちろん、メモの現物が写真のような証拠として示されたものではなく、内容だけであるため、どの程度信憑性があるものか定かではない。
しかし、地球では約2000年前にイエス・キリストとして生を得て、現在ではサナンダと呼ばれる宇宙存在とチャネリング可能なキャンダス・フリーズ氏が、入手したメモの内容をサナンダに読み聞かせ、本物かどうか尋ねたところ、確かにJFKが演説しようとしていた内容に間違いないという返事をもらったという。
チャネリングの信憑性自体、どの程度のものなのか計り知れない点もあるが、興味深い内容と思われるので、幻のJFK演説の内容を以下に紹介しておく。
「わがアメリカ国民、そして世界中の皆さん、今日、我々は新しい時代への旅に出発します。人類の幼年期である、一つの時代は終わりに向かい、新たな時代が始まろうとしています。
私がお話しする旅とは、計り知れない試練に溢れていますが、我々の過去のあらゆる努力は、成功するために我々の世代を比類なくサポートしてきたものと私は信じます。
この地球の市民である我々は孤独ではありません。無限の知恵を備えた神は、我々自身のように、他にも知的生命体を宇宙に住まわせてきました。
そのような権威に対して、私はどのように述べることができるでしょうか? 1947年、わが軍は、乾燥したニューメキシコの砂漠で、起源不明の飛行船の残骸を回収しました。まもなく、我々の科学により、この乗り物は、はるか遠くの宇宙空間からやってきたことが分りました。その時以来、わが政府はその飛行船の製造者達とコンタクトを取ってきました。
このニュースはファンタスティックで、実際、恐ろしく思われるかもしれませんが、皆さんは過度に恐れたり悲観して捉えることのないようお願い致します。私は大統領として、そのような存在が我々に対して無害であることを皆さんに保証いたします。
むしろ、全人類の共通の敵である、圧制、貧困、病気、戦争を克服できるよう、彼らはわが国家を助けてくれることを約束しております。
彼らは敵ではなく、友人であると我々は判断いたしました。
彼らとともに、我々はより良き世界を創造することができます。未来に障害や誤りが生じないかどうかは分りません。
我々はこの偉大なる土地で暮らす人々の真の運命を見つけたものと信じます。世界を輝かしい未来に導くことです。
なぜ彼らがここにやって来て、なぜ長期間に渡って我々のリーダー達が彼らの存在を秘密にしてきたのか、近く、皆さんはそれらについてさらに知らされることになるでしょう。
私は皆さんに、臆病にならず、勇気をもって未来を見ていくようお願い致します。なぜなら、地球に存在した古代の平和のビジョンと全人類の繁栄を、この我々の時代に、我々は達成できるからです。
あなた方に神のご加護のあらんことを」
90年代の宇宙人ブームと宇宙人性悪説
このJFKの幻の演説内容について、皆さんはいかが思われるだろうか? なぜ長期間に渡って秘密にされてきたのか、後に説明されることになるという部分など、興味深いと言えるかもしれない。このJFKの演説メモの真偽はともかく、JFKは暗殺され、宇宙人情報が公開されることはなかった。しかし、米当局に通じた人々によるリーク情報で、70年代後半から10年程度、宇宙文明に対して好意的に捉える映画が制作され、大ヒットした。このまま宇宙人情報は次第に表面化するものと思われたが、90年代になって(特に映画『JFK』公開以降)、状況は次第に硬化していくようになった。宇宙人は敵意を持って地球侵略を企んでおり、人類にとって脅威な存在として描かれる映画がヒットするようになったのだ。
例えば、90年代になってから、宇宙人問題で世間を騒がす事件があった。ピュリツアー賞受賞歴もあるハーバード大学の精神科医ジョン・マック教授が、94年の著書『アブダクション』において、数多くの臨床例を挙げ地球外知的生命体による人体実験は否定できない事実だと主張し、メディアで大反響を呼んだのだ。また、それ以前から宇宙人によるアブダクション(誘拐)を長年研究してきたテンプル大学の歴史学教授デイビッド・ジェイコブス博士も、地球外知的生命体が地球上でアブタクションを行っているのは事実であり、その目的は宇宙人と人類のハイブリット(異種交配)化により、地球環境で生存できる交配種を増やすことで、地球乗っ取りが目指されていると分析・警告した。
このような動きは、ある意味では、影で宇宙人情報をコントロールする人々にとっては好都合であったかもしれない。つまり、宇宙人は決して地球人に対して友好的ではないため、彼らを信じることなく、政府を信じるよう一般大衆の意識を向けさせることに利用できるとも考えられるからだ。
しかし、計算通りにはいかなかったのだろう。その頃から、ロズウェル事件に関して、軍関係者により口止めされていた目撃者や証人達が一斉に事件の真相を暴露し始める状況も現れ、米国防総省も1994年の定例記者会見において、異例にロズウェル事件に宇宙人が関与したことを否定することに至った経緯は先に触れた通りである。しかし、その説明が明らかに矛盾したものであったため、さらなる疑惑を呼ぶことになり、米市民の不満は高まっていった。
1995年には、真偽は不明だが、FOXテレビでは、宇宙人解剖ムービーを公開する特別番組を放映し、さらなる関心を呼んだ。また、FOXテレビは、地球外生命体の存在や超常現象を隠蔽する政府系組織に挑むFBI捜査官を描いたテレビドラマ『X-ファイル』を放映すると、アメリカばかりか、日本でも大ヒットし、1998年には映画化されるまでに至った。
このように、90年代中頃は、空前の宇宙人ブームとも呼べる状況となり、当時の世論調査では、アメリカ市民の約半数が、政府によって宇宙人情報が隠蔽されていると考えている状況が判明した。
宇宙人情報公開への動き
1990年、ノースカロライナ州の医師スティーブン・グリーア博士が中心となり、元NATO上級曹長ロバート・O・ディーン氏も含めて、CSETIという組織が結成された。CSETIの当初の目的は、UFOに関する極秘情報を持った証人を集め、米国議会の公聴会で証言してもらうことと、人類の方から宇宙人達を呼び寄せる活動を行うことにあった。ロズウェル事件ばかりでなく、アメリカ国内では数々のUFO墜落事件、宇宙人によるアブダクション事件、UFOや宇宙人との遭遇事件などが発生しており、証人が多数存在している。さらに、UFOや宇宙人が存在することを認めた米軍の極秘文書に接することのできた退役軍人達も多く存在する。CSETIでは、そのような証人の中から、議会の公聴会で証言しても構わないという人々を200人以上集めてきた。そして、2000年には、メディアを通じて世界に訴え、その影響力が議会で公聴会を開く原動力に繋がることを求めて「ディスクロージャー・プロジェクト」を推進した。
2001年5月9日、首都ワシントンDCのナショナル・プレス・ビルにおいて、歴史的な記者会見が開かれた。元宇宙飛行士、情報将校、陸・海・空軍の大将らを含めた退役軍人など、UFOや宇宙人に関して直接体験をした20余人の信頼のおける証人達が、世界中のメディアや政界人達の前で、衝撃的な体験を赤裸々に告白したのだ。この記者会見は世界中に配信されるニュースとなった。
因みに、CSETIの活動は、1993年の時点でクリントン大統領にも伝わっていたという。UFOに誘拐された人々(アブダクティー)をカウンセリングしてきた医師リチャード・ボイラン博士によると、UFO肯定派のローレンス・ロックフェラー氏は、元情報将校で海軍の司令官であったスコット・ジョーンズ博士の助力を得て、米政府が所有するUFOと宇宙人の情報をクリントン政権時に一般に公開するよう進言したという。
1993年3月、ロックフェラー氏とジョーンズ博士の二人はホワイトハウスの科学顧問ジョン・ギブソン博士と会って、『UFO信仰の基盤』と題された論文を手渡した。そして、クリントン元大統領はその提案に合意したというのだ。
そのプロジェクトを実行するために、ホワイトハウスの彼の事務所にはロックフェラー氏、ジョーンズ博士をはじめ、現在はUFO研究家であるがフランス政府UFO調査局の元将校でもあったジャック・バレー博士、元国防総省長官メルヴィン・レアード氏、そして米空軍将校らが出入りしていたという。
1995年4月、ジャック・バレー博士は自分自身が持つUFO情報ばかりか、クリントン元大統領がどの程度UFO情報にアクセスできるかについて、ギブソン博士に語っている。
因みに、カーター元大統領は重大なUFO情報にアクセスしようとしたところ、当時のCIA長官ジョージ・ブッシュ氏(現大統領の父親)に拒まれており、クリントン元大統領は、ギブソン博士から得た情報とCIAからの情報が食い違う点に不満を感じていたという。
そして、アメリカ市民に宇宙人に関する真実を語る時期が来ることを考えて、クリントン元大統領は状況に合わせたアナウンスを行うため、いくつかの“指導”ビデオを制作していたというのだ。
このように、90年代にはUFOの話題がアメリカ中を騒がせ、真実の情報公開を期待する人々が急増した。ところが、その反面、信憑性に欠ける情報も蔓延することとなった。また、UFO情報を持った人々に、黒づく目の不審人物(メン・イン・ブラック=MIB)が現れ、他人に情報を漏らさぬよう脅迫を行ったり、証拠ビデオや写真等を奪い去っていく事件が次々と報告されるようになった。当事者達にとってこれは極めて深刻な問題ではあったが、1997年にそのような出来事を面白おかしく描いた映画『MIB』が公開され、ヒットするような状況も現れた。真実に偽情報を混ぜ込んで、すべてが嘘であると思い込ませようとするCIAの典型的な情報操作であるとも囁かれている。
宇宙人性悪説VS.宇宙人性善説
この90年代の宇宙人ブームにおいて、一貫していたことは、宇宙人を敵意ある存在として捉える風潮であった。
しかし、忘れてはならないのは、宇宙人やUFOとの遭遇事件はアメリカの専売特許ではない。世界中では、数多くの民間人が宇宙人と物理的にコンタクトを取っていたり、テレパシー的な交流で情報を受け取るチャネリング現象も多数報告されている。そして、重要なことは、アメリカで支配的となったように、宇宙人たちは地球人を敵対視しているのではなく、むしろ、地球人が抱えている地域紛争、環境問題、貧困問題など、様々な点で援助を惜しまないという、友好的な宇宙人たちの話が非常に多いことである。
先に触れたマック教授も、徹底的にアブダクティーを調査した結果、宇宙人たちはアブダクションというやや荒っぽい手法を取りながらも、いまだに人類が戦争のない社会を確立できずにいることや、地球の生態系に破壊的なライフ・スタイルを取り続けていることに対して、警告を与えてくれていることがわかったという。
90年代後半からインターネットも普及し、人類の精神性向上に貢献するようなチャネリング情報を提供するサイトが増加し、多くのファンを獲得した。もちろん、同時に、信憑正に欠ける情報も世界中に一気に氾濫するようになり、現在のところ、不安と希望の両方を抱えた人々が増えてきていると言えるかもしれない。
いずれにしても、現在は、70年代後半から80年代までのメディアの雰囲気とは、大きく異なっている。変化は、ブッシュCIA長官の時代から顕著になったようだ。90年代以降、映画やテレビのような主要メディアにおいては、敵対的宇宙人が地球を侵略してくるような内容が増えてきたのだ。一方で、インターネット上では、地球人に対して極めて友好的な宇宙人たちについて多く語られるようになっている。つまり、二極化の方向性が現れており、ここに政治的な力が加わってきた可能性も考えられるかもしれない。現状において、一般市民は宇宙人に対してどのように捉えているのか考えてみると、むしろ、友好的に捉える方が多いと言えるかもしれない。主要メディアは、不思議にも一般市民が求めていない情報を与えているように思われる。ここには、恐怖を市民に植え付けることで、優しく愛に満ちた言葉を語りかける宇宙人を安易に信頼するのではなく、地に足付けて政府を信頼するように仕向ける意図が見え隠れする。また、一見愛を持って語りかけてくるように思える偽チャネリング情報も流して、大衆意識を操作しようとしている面もうかがい知ることができよう。
しかし、一方で、人類が宇宙人と接触するような機会が近い将来に想定されているとも推測できるかもしれない。近年のチャネリング情報では、いかに地球人達は一部の権力者や政治家達によりコントロールされてきたか警告すると同時に目覚めることを喚起してきている。そして今、人々はそのような現実を知り、同時に、世界平和を考えた精神性も高めつつあるという。
政府としては、彼らの言葉を信じることなく、一般市民が自分達の側に立つことを望むのは当然であると言える。とは言え、ガス抜き程度に情報提供を許すと伴に、現実に何かが起こった際のために、市民に免疫を付けておく必要があるという側面からも、政府としては、偽情報も含めた様々な形で宇宙人情報を伝えようとしているようにも考えられる。あるいは、偽りのファースト・コンタクトを米当局は画策しているのかもしれない。
去る3月10日、参議院総務委員会で民主党の山根隆治参議院議員は地球外に知的生命体が存在する可能性に言及し、UFOに対して政府側が無関心過ぎる点を批判すると同時に、麻生総務大臣に情報収集と解析を求めた。それに対して、麻生総務大臣は、現状では特別なことは行っていないが、いつそのような事態が発生するかもしれない点で、注意していきたいという回答を行った。そして山根議員は、本来ならば防衛庁に聞くべきことだが、国防上の問題故にそれは避けたいという意味深長な発言でUFOの話題を終わらせた。
そろそろ変化の時が近づいているのかもしれない。その点において、近く公開される『宇宙戦争』は、パニックを起こさない程度の情報提供なのか?
宇宙戦争は既に行われてきた!?
故ロナルド・レーガン氏は、1980年に69歳という史上最高齢で大統領に当選した。レーガン氏はラジオアナウンサーやハリウッドの俳優という経歴があり、もともと民主党員であったが、なぜか1962年に共和党に鞍替えして、66年にカリフォルニア州知事に当選し、ついには大統領にまで登りつめた人物だ(どことなくアーノルド・シュワルツェネッガー現カリフォルニア州知事と似ている)。在任中、彼は社会福祉政策の大幅カットと、大規模な減税による経済刺激(レーガノミックス)を実施し、経済刺激で景気回復を狙ったが、軍事費の拡大もあって財政赤字を拡大させた。冷戦中、ソ連に対抗するため、「強いアメリカ」を掲げ、宇宙空間からソ連のミサイルを打ち落とすという名目でSDI(戦略防衛構想)にも着手した。当時大ヒットした映画「スターウォーズ」になぞらえ、スターウォーズ計画とも呼ばれた。
具体的には、高出力レーザーを備えた人工衛星が、飛んでくる敵のミサイルを撃破する防衛シールドを張り巡らすものであった。しかし、ご存知のように、ソ連は崩壊し、これまで弾道ミサイルが発射されるようなことはなく、そのような兵器が使用されることは無かったことになっている。
ところが、現実には、そのレーザー兵器は使用されていた可能性があるのだ。米メリーランド州在住のドナルド・ラッシュ氏が興味深い映像の録画に成功した。NASAは、独自のケーブル・チャンネルを持っており、スペース・シャトルや人工衛星から見える宇宙空間の映像、宇宙飛行士達の行動、NASAの管制センターの映像など、解説も無い退屈な映像を日々延々とライブで流している。ラッシュ氏は、そのような映像の中に、UFOのような物体が映りこむ可能性があると考え、毎日NASAチャンネルの録画予約をしてから仕事に出掛け、帰宅するとその録画ビデオに何かが映っていないか調べていた。そして、80年代から90年代中頃までに、UFOが登場する貴重な映像をいくつも録画することに成功したのだ。
発光した未知の飛行物体が、宇宙空間で突然速度や進行方向を変える映像から、宇宙船と思われる飛行物体が大量に地球を取り囲んでいる映像、さらには、スペース・シャトル内の宇宙飛行士が「未確認飛行物体が居る」と発言している映像(音声)なども録画した。そして、もっとも興味深かったのは、飛行中のUFOに対して、ミサイル又はレーザーのような光が飛んだ瞬間、そのUFOが進路を変えて超高速で逃げていく映像であった。
ここで思い出されるのが、レーガン大統領が進めたスターウォーズ計画である。実のところ、アメリカ軍は、スターウォーズ計画を始めて以来、地球に近づく宇宙船をレーザー兵器によって追い払っていたのかもしれない。あるいは、アメリカ軍ばかりではなく、宇宙人が加わって、地球の大気圏外では、常に複数の地球外生命体と戦闘が繰り広げられてきていた可能性がある。
そのような過去を考えるならば、人類と宇宙人との間に宇宙戦争が起こっても不思議ではない。しかし、宇宙人たちは、地球人に危害を加えるために地球にやってきている証拠は存在しない。アメリカ軍は、地球にアプローチしてきた宇宙人達と何らかのコミュニケーションが可能で、敵意ある存在と確認してから、攻撃を行ってきたのだろうか? 地球の大気圏外で繰り広げられてきた戦闘は何だったのか?
スピルバーグ監督は闇の政府に屈したのか?
ブッシュ大統領は、ネオコン(共和党タカ派)の支持を得て、世界中の人々ばかりか、アメリカ市民の声すら無視して、強行的にイラク戦争に突入した。JFK暗殺の背後にも、宇宙人情報隠蔽の背後にも、現在のネオコンに繋がるような勢力が存在した可能性がある。映画『JFK』の公開後に、なぜか宇宙人は敵意ある存在として描かれる傾向も顕著になった。
近年のスピルバーグ監督の映画は、自分が心から楽しいものを作りたいという欲求から自由に制作を行っているというよりも、ある種の責任感からこのような映画を作り、このような映画を人々に見せる必要があるという意識に変化してきているようにも思われる。実際、スピルバーグ監督本人も「作っていて楽しいものと、作るべきものがある」と言っている。後者の責任感とは、一体どこから出てきているものなのだろうか?
おそらく、『E.T.』は「作って楽しいもの」であっただろうが、今回の『宇宙戦争』は「作るべきもの」であったかもしれない。映画『宇宙戦争』は、商業的には成功するだろうが、『ジュラシック・パーク』のように、CGを駆使した映像のみが売りで、単純なストーリー展開で拍子抜けに感じる観客も現れるのではないか? しかも、ジョージ・ルーカス監督の『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』の北米公開が5月19日(日本公開7月9日)であり、その影に隠れて、『宇宙戦争』が一般市民に与える影響はあまり期待できないかも知れない。とはいえ、本人いわく、『宇宙戦争』のテーマは「家族愛」という。「家族の大切さを考えれば、他国を侵略して戦争を起こすようなことは少なくなると思う」とスピルバーグ監督は話している。いずれにしても、宇宙文明に明るさと未来を投影させた『スター・ウォーズ』と平行して、今夏は宇宙に対する関心が高まりそうだ。
世界は今、急速に変わりつつある。本映画の公開が、時代に逆行したネオコンによる最後の悪あがきとリンクして見えてしまうのは、筆者だけであろうか? あるいは、間近に迫ったファースト・コンタクトへの予行演習的な情報提供なのかもしれない・・・。
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