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NESARAの謎(要約版) 詳細は拙著『世界を変えるNESARAの謎』参照 2003年春執筆原稿を2008年4月に加筆修整 |
※当記事及び写真の無断転載を禁じます。
世界を熱狂させるNESARA
世の中には常人の理解を超えた奇抜な考えを持ったり、珍しい行動をとる人が居るものだ。多くの人々はただ首を傾げたり、呆れ返ったり、冗談だと考えたりする。「なぜ?」と思って、当人に話を聞いてみても、尚も理解できないことがある。それが集団化すれば、カルトとして捉えられたりする。
筆者がこれから紹介する珍事はアメリカで数年前に発生したものだが、その影響はインターネットを通じてすぐに世界に飛び火した。実際に行動を起こしてきた人々の数は限られると思われるが、支持者の数は数万人、いや数十万人とも言われている。そこまで影響が波及すると、我々はただ呆れ返っているだけではいられなくなる。筆者は自身のウェブサイトを通じてこの現象を5年以上前に初めて日本語で報じたものだが、近年、日本国内での関心が高まっている。そのため、国内から持ち上がる疑問の声に応えて、その珍事を紹介・解説しておきたい。
どのような珍事が発生したのかと言えば、インターネットを通じて広がったある情報を信じる熱烈な集団が、世界各地でデモや署名活動を行っているのだ。彼らが信じていることは、NESARA(ネサラ)と呼ばれる新たな法律が、アメリカで施行される予定になっており、それによって世界の政治・経済システムが根底からひっくりかえるとされることだ。
支持者らによると、そのNESARAとは、National Economic Security And Reformation Act(国家経済保証及び改正法)の略で、2000年3月9日に米国議会で秘密裏に可決され、同年10月10日に前クリントン大統領によって署名・承認されたという。しかし、米最高裁判所がその事実を公布前にもらさぬよう、厳しい緘口令を布いたため、世間には今日までその真相が知らされていないというのだ。
具体的に、NESARAには次のことが含まれるという。
@ 連邦準備制度(FRB)を財務省が吸収・国営化し、 為替相場の変動を抑える金本位制を採用する。
A IRS(米国国税庁)を解体して所得税(や資本利得税、遺産・贈与税)を廃止し、政府の歳入は、新設するNational Tax Serviceが定率の売上税(日本では消費税に相当して、税率は全州一律で14%程度)から得る(新品商品に限定され、中古品や生活必需品には適用されない)。
B 憲法に準拠した法を回復する。
C 銀行の不正による救済策として、クレジット・カードやローンの負債を免除する。
D 現在の大統領と副大統領の辞任を必要とし、憲法に則った(NESARAの)大統領及び副大統領が替わりとして時期選挙まで任命される。
E 任命された大統領は「平和」を宣言し、アメリカの攻撃的な軍事政策を終結させる。
しかし、このNESARAの中身が、なぜ施行前には公表できず、緘口令が布かれなければならないのか?
それは、まさに資本主義社会の闇の部分を露とする。軍需産業・石油業界と繋がりの深いネオコンとその背後に潜む「影の政府」は、自分たちの利権を守り、利益を追求するためにも、9.11テロばかりか、イラク戦争を故意に起こしてきたとされる。そのため、このような徳政令とも言えるNESARA施行を、彼らは是が非でも阻止したいのだ・・・。
このように説明するのは、インターネット上でDove of Oneness (調和の鳩)と名乗る女性ジャーナリスト、シャイニ・グッドウィン氏である。彼女によると、NESARAの情報は、主に二人の上院議員、ワシントンDCの法律家達、そして、多くの政府高官達が匿名で語ってくれたという。そして、NESARAはアメリカ国内の問題に留まらず、その施行は国際司法裁判所での判決に委ねられているという。これらはあまりにも信じがたい情報であるが、この怪情報を信じる者達は、インターネットを通じて世界中に爆発的に広がった。
彼らは、一刻も早くNESARAが正式に公布・施行されるよう、米最高裁判所に直訴の葉書を送ったり、請願書への署名活動やデモ行進を世界各地で行ってきた。オランダのハーグにある国際司法裁判所前では毎週のようにNESARA公布を要求したデモが行われ、アメリカの首都ワシントンDCでは、NESARAのメッセージを掲げた巨大ビルボードを乗せたトラックが連日4台周回することもあった。デモは、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、オーストラリアで活発に行われ、NESARA支持者達は道行く人々にパンフレットを配りながら、熱心にNESARAを説明して回った。
これはまったくの怪情報に思えるが、ここまで世界中で社会現象化した事実に注目すると、簡単に無視できるものではない。世界各地でニュースとなった以上、彼らが主張するNESARAとは一体何なのか、NESARAとはどんな社会を構築する法律であると語っているのか、もう少し知っておく必要がありそうだ。いくつか矛盾点を感じる個所もあるかもしれないが、サイバーカルト集団とも呼ばれるNESARA支持派の弁として、まずはお読み頂きたい。
NESARA構想の思想背景
それは今から50年も前に遡る。世界でもトップクラスの銀行家達の中に、今の歪んだ世の中を変革せねばならないと考える人々が現れた。現実的には、自分達の先代が関わってきたことでもあったが、それまで世界の大半の富が上位5%の人々によって握られてきた。彼らは、この富の集中が原因で、世界に破局を招く可能性があることを悟った。彼らの家系からすると、快くその決断を下せるものではなかったが、あまりにも悲惨な現状と人類の将来を考えると、勇気を持ち、他者の幸福を考える心を持つべきである、いや、もはや悩む猶予も無いという結論を下した。
これは、いわゆる「影の政府」と呼ばれる人々の内部分裂と捉えることができるかもしれない。彼らは、自分達の権力と富を拡大するために、世界中のマスコミを掌握して大衆をマインドコントロールし、化石燃料への依存体質を作り、軍需産業の利益のために故意に戦争すら起こしてきたと言われてきた。ところが、人類の未来に危機感を得て、それまでの姿勢を転換した勢力が現れ、従来の体制(利権・権力)を維持したい勢力との間で、ついに内部分裂を起こした。そして、改心した新勢力が、自分達が蓄積してきた富を世直しのために世界中の人々に分配するばかりか、富者がさらに富み、貧者がさらに貧しくなる現在の経済システムに終止符を打つべく、NESARAを誕生させたという。
この構想を実体化したのがホワイトナイツ(白馬の騎士)と呼ばれる人々だ。1993年、米国内の諸銀行と連邦政府に対して農業者組合(Farmers' Union)が起こした訴訟が、最高裁判所に持ち込まれた。その審議の過程で、アメリカ政府は諸銀行と共謀して、農業ローンで偽って抵当権を行使してきた事実が判明したことがあったという。さらに、アメリカ政府とFRBがアメリカ国民に対して様々な違法行為を犯してきた証拠が裁判官達に認識された。そこで、農業者組合に有利な判決が下され、政府や銀行の改革が正当に行われることを監視するための委員会設置が決定された。その後、この改革を支援するために選ばれたのがホワイトナイツで、経済、金融、法律や他の関連分野の専門家たち数千人がメンバーに名を連ねているという。
改革の具体例
そもそも、アメリカの金融経済を動かしているFRBは国営ではなく、株式会社である。これまで会計監査がされたこともなく、株主も公表されていない(因みに、日銀もほぼ同様である)。1913年に成立した連邦準備法により完全独立権を有している。しかし、合衆国憲法第一条八節五項には、「合衆国議会のみが通貨発行権を有する」と明記されており、実はFRBの存在そのものが合衆国憲法に違反しているのだ。
長年アメリカでは、FRBと関わる一部の富裕層が市場を操作してきたと疑う人々が存在してきた。株主がきちんと公表されていないので、その疑いは当然のことである。そのような不透明性を払拭するためにも、NESARAでは、FRBではなく、連邦政府直属の財務省が議会の監督の下にすべての管理を行い、金本位制を採用することで相場の安定を図ることを謡っている。
また、ワシントン州選出の元下院議員ジャック・メットカルフ氏(1927-2007)の発言で有名だが、FRBが国営ではないことにより、アメリカ国民がFRB発行の紙幣を使用するために、年間270億ドル(国民一人あたり約100ドル)もの言わば使用料を負担しているのが現状で、国の財政を無駄に逼迫させているという。
そこで、
@連邦準備制度(FRB)を財務省が吸収・国営化し、 為替相場の変動を抑える金本位制を採用する。
(元下院議員ジャック・メットカルフ氏)
が行われる。
また、合衆国憲法では、税金は全市民に一律に課すことを規定しており、所得税は20世紀初期まで存在しなかった。しかし、第二次世界大戦を前に一時的に軍資金が必要とされたことから、例外的に所得税が設けられ、平均所得の約6倍以上を稼ぐ富裕層にのみ課されることになった。ところが、戦争が終わっても政府は所得税の廃止を行わず、逆に憲法を犯して庶民にまで所得税を課すようになってしまったのだ。だからこそ、
AIRS(米国国税庁)を解体して所得税(や資本利得税、遺産・贈与税)を廃止し、政府の歳入は、新設するNational Tax Serviceが定率の売上税(14%程度)から得る(新品商品に限定され、中古品や生活必需品には適用されない)。
B憲法に準拠した法を回復する。
という改正がNESARAで行われるという。
そして、@が実現されていないことに関係するが、最も重要なことは、富者がさらに富むようなマネーゲームを行える現状が、世界中に様々な不和を起こしてきた最大の原因であると考えられており、その根を絶つことにある。それには、ローンに対して不当に高率の利子を課してきた金融ビジネスの見直しが含まれる。そこで、NESARA施行後は、ホワイトナイツが調達した資金と金(ゴールド)に基づいて、
C銀行の不正による救済策として、クレジット・カードやローンの負債を免除する。
が直ちに実行されるという。
そして、憲法違反ばかりか、数々の不正行為をアメリカ政府自体が行ってきたことの責任として、
D 現在の大統領と副大統領の辞任を必要とし、憲法に則った(NESARAの)大統領及び副大統領が替わりとして時期選挙まで任命される。
また、本来アメリカ合衆国憲法においては、他国から先制攻撃を受けるか、或いは宣戦布告をされない限りは他国に武力行使を行えないことになっている。ところが、アメリカ政府は長年この憲法違反を行い、それを既成事実として、次なる戦争へと、近年エスカレートを見せている。だからこそ、
E任命された大統領は「平和」を宣言し、アメリカの攻撃的な外交・軍事政策を終結させる。
は、達成されねばならない重要課題であるのだ。
他には、本来保証されるべき言論及び表現の自由が現在のアメリカでは制限されている状況が改善される。例えば、極めて効果の高い医療技術や、化石燃料に依存しない代替エネルギーの利用法が開発されると、産業界ばかりかFDA(連邦食品医薬品局)やCIA等の政府機関からも妨害される状況がある。だが、NESARA施行後は、憲法に準拠した法が回復されるため、産業界や政治家の利益ではなく、市民の利益が尊重され、自由が保障されるようになるという。
さらに、市民の生活水準が向上する背景として、税負担の軽減にともない、市民の平均賃金水準が上昇し、住宅も購入しやすくなり、高齢者層へのケアも厚くなるとされる。また、アメリカ国内でNESARA施行後、世界各国でも同様の法が数年以内に採用されることになるという。
つまり、NESARAは、金融・税制の大幅な改革ばかりか、現政権を倒してアメリカの政界大編成を行う。そして、お金によってすべてが決定されてきたシステムが解体され、庶民がお金に困ることなく、情報開示も公正に行われ、地球環境への配慮も怠らない理想的な社会を実現することが主眼にあるという。
まさか、こんなことが本当に実行されるのかと疑問に感じられることだろう。一方で、もし事実なら、アメリカばかりか、世界がひっくり返り、平和になるための起爆剤となりえる大ニュースであり、NESARA支持者達が起こした不可解な行動もある程度理解できよう。
ついにアメリカ政府も見解を発表!
グッドウィン氏が提供したNESARA情報は信じがたいものだが、現在の政情やこれまでの歴史的背景と照らし合わせると、頷ける部分もあり、偽情報であるとしても、異例に手の込んだものとも言える。
実際、これだけ世界中で騒がれると、アメリカ政府も無視できなかった。実は、2002年10月4日、市民からの質問が殺到したことを受けて、米財務省はNESARAに関してホームページ上で次のような回答を掲載している。
質問: National Economic Stabilization and Recovery Act (NESARA) というものがあり、それが経済回復を促すために即座に法として制定されるべきであると聞いています。財務省はこの法律制定を支持しますか?
回答: 力強い経済とその繁栄の維持は、大統領及び現政権の最優先課題です。オニール財務長官は、関心を寄せる市民によって推し進められるNational Economic Stabilization and Recovery Act (NESARA)のような考えを聞いて高く評価しています。
ご存知のように、NESARA提議はまだ議会に持ち込まれていないばかりか、現在のいかなる法にも含まれておりません。照合とバランスを持つ我々の政治システムにおいて、財務省は、議会での承認による施行なくして、NESARAのいかなる部分をも実行・管理する権限は与えられておりません。
大統領とオニール財務長官は伴に、経済を刺激するしっかりした政策を作るよう、議員達と取り組んでいます。その年の中頃、「経済成長と減税を調和させる法律(通称、大型減税法)」(Economic Growth and Tax Relief Reconciliation Act)により、最近の景気後退に対して非常に早い反応を起こしました。この法律制定の一部として、事前税金還付が7月に始まり、即座に消費者の手にお金が戻りました。
9月11日のテロリストによる攻撃と、その影響による経済的混乱以後、健全なペースでの経済成長を保つために、さらなる刺激策が必要と思われます。現政権は、法人、個人、小規模事業者に課される税金の重荷を軽減することが、最大の関心事である、収入のより多くの部分を手元に残すことになり、経済の刺激に最善であると信じています。
このように、財務省としては、議会で承認されていないことは実行に移すことが不可能であるという事実に触れて、NESARAが秘密裏に可決されている説を否定している。
ただ、財務省のこの対応は大変興味深いものでもあった。わざわざ財務省がこのような回答をホームページに掲載したことから、2002年10月以前から既に市民によるNESARA熱が存在していたこと、そして財務省は実際にNESARAに関する問合せを受けてきたことが露呈したからだ。
財務省が回答したように、NESARA法案は議会にも提出されていない状況なのか? それとも、グッドウィン氏が主張するように、公布・施行前の緘口令で、公言できないだけなのか?
不可解な新聞広告の掲載
財務省が示したNESARAに関する質疑応答を読んで、気付かれた読者も居るかもしれない。財務省では、NESARAをNational Economic Stabilization and Recovery Actの略であると捉えている。筆者が最初に紹介したのは、National Economic Security And Reformation Actであった。National Economic Stabilization and Recovery Actは、National Economic Security And Reformation Actに緘口令が布かれているために、代用されてきたとグッドウィン氏は説明するのだが、実は異なるものとして存在している。
2001年3月23日、アメリカで唯一の全国紙『USA Today』には、奇妙な広告が掲載された。その広告は、ダラス、デンバー、カンザスシティー、ミネアポリス、ナッシュビル地区で、紙面にして4分の1サイズの次のようなものであった。
NESARA
The National Economic Stabilization and Recovery Act (国家経済安定化及び回復法)
アメリカの問題に対する実用的な解決法
最近かなり悪いニュースがありましたか? 景気後退、一時解雇、人員削減、歯止めの利かない公私の債務、あなたの抱える問題に対する政府の無神経、環境問題に対する不十分な進展、税金の不公正な割り当て、続く貿易不均衡、高賃金の職の海外への移動、未来に対する暗い見通し、貧者がやり繰りするだけでもがいている間にも、富者がさらに裕福になる。
次のような法律制定を想像してご覧なさい:
借金を無くすか、劇的に減らす
活気あふれる経済区としてスラム化地区を回復することで都会の無秩序を減らす
誰もがマイホームを持てるように促進する
高賃金で生産性の高い職を回復させる
万民に安全な未来を与える
経済的なプライバシーを回復する
高齢者に対する恩恵を増やす
インフレを無くす
所得税を公正な税金と置き換える
新しく公共の職を生み出すために5000億ドルを用意する
銀行の破産を無くす
貿易不均衡を是正する
公私の債務数兆ドルを無くす
片親が家族を養えるように支援する
貨幣のコントロールを人民の手に戻す
万民に公正な新しい銀行制度を整える
前例のない経済ブームによってアメリカ市民に恩恵をもたらす
平均生活水準を二倍にする
あまりにも出来すぎていますか? NESARAによって提案される解決策は、過去10年間ワシントンの政治家達に利用されてきました。市民がしかるべき支持を表明するやいなや、議員達の何人かは個人的にもその計画を支持すると言っています。それでは、次の3段階の計画でこれらを現実にしましょう!
1. www.nesara.com (現在はnesara.org)でこの計画の詳細を学びましょう。
2. ワシントンの役人に連絡を取って、NESARAにおける様々な提案実現のためにどこに要求したら良いのか彼らに質問しましょう。
3. インターネットや国家的なメディアを通じて、NESARAの公開討論を支持しましょう。
素晴らしいニュース:
悪いニュースの問題に対して実用的な解決法があります。ご覧下さい! さらなる情報は、非営利団体のNESARAインスティテュートまでご連絡下さい。ホームページ: www.nesara.com (現在はnesara.org), 住所:7635 Jefferson Hwy. No. 354, Baton Rouge, Louisiana 70809
もう一つのNESARA
この広告を掲載したNESARAインスティテュートは、The National Economic Stabilization and Recovery Act (国家経済安定化及び回復法)という法案(通称NESARA)を議会に提出し、承認されるようにアメリカ政府機関及び政治家達に働きかける運動を行い、庶民にも呼びかけている。このNESARAの採用により、広告に列挙されたことが実現されると言うのだが、詳細を調べてみると、次のことが含まれる点は注目に値するだろう。
@ 連邦準備制度(FRB)を財務省が吸収・国営化し、 為替相場の変動を抑える金本位制を採用する。
A IRS(米国国税庁)を解体し、所得税(や資本利得税、遺産・贈与税)を廃止し、政府の歳入を定率の売上税(14%程度)から得る(新品商品に限定され、中古品や生活必需品には適用されない)。
B憲法に準拠した法を回復する。
さらに、このNESARAが施行されると一気にアメリカの国家債務を約1兆ドル減らすことが出来るという。これは、現在のアメリカ経済の低迷を救うばかりか、20年以内にアメリカ市民の生活水準を二倍に高める効果をもたらすと期待されている。
つまり、先述のNESARAと類似するのであるが、NESARAインスティテュートの推すNESARAにおいては、金融・税制の変革によりアメリカ経済の活性化を図ることに絞られている。そのため、下記のような項目はこのNESARAにおいては掲げられていない。
C銀行の不正による救済策として、クレジット・カードやローンの負債を免除する。
D現在の大統領と副大統領の辞任を必要とし、憲法に則った(NESARAの)統領及び副大統領が替わりとして時期選挙まで任命される。
E 任命された大統領は「平和」を宣言し、アメリカの攻撃的な軍事政策を終結させる。
このように、NESARAインスティテュートの示すNESARAの方がより現実的かつ常識的な内容となっている。さらに、NESARAインスティテュートでは、NESARAが秘密裏に既に議会で可決された法律であるとは決して言っておらず、これから議会に提出され、承認を目指すものとなっている。つまり、まったく怪しい情報ではない。このNESARAが本物なのか? のちに検証するが、いずれにしても、NESARAによって、良い意味でアメリカに大変革が起こるとされ、市民に大きな期待を与えているのが現実である。これが珍騒動の背景にある。
アラン・グリーンスパン
そもそもNESARAは、前FRB議長であるアラン・グリーンスパン氏がかつて経済安定化のために考案した金本位制に基づいた経済理論が土台になっているという。
『The Objectivist Newsletter』誌の1966年7月号において、グリーンスパン氏は「金(ゴールド)と経済の自由」という記事を発表した。その中で彼は、自由社会における金の役割を、実体を持った「スタンダード」として重要視している。そして、彼は次のように述べている。
(前FRB議長アラン・グリーンスパン氏)
「もし人々がお金として受け入れられる、客観的価値を備えた商品を持たなければ、原始的な物々交換を行うか、自給自足の農場で暮らすか、特定分野で計り知れない強みを持っている必要に迫られる」
アメリカでは1971年に金本位制(ドルと金との交換)が廃止されているが、グリーンスパン氏は、現在でも持論を曲げていない。2001年、彼はある法律家に1966年の記事関して何か訂正があるか質問を受けているが、その際、「単語一つすら修正点は無い」と彼はきっぱり答えている。
グリーンスパン氏は、金本位制こそが最も優れた金融システムであると結論を出している。実体のある金(ゴールド)に支えられることによってのみ、「信用」の拡大を防ぎ、経済の安定とバランスの取れた成長を支えるからであるという。
影の政府との関連も囁かれてきたグリーンスパン氏であるが、NESARA関係筋からの情報によると、FRB内部でも対立が起こっており、グリーンスパン氏は光と闇の二面性を備えた人物として捉えられるようだ。
NESARAの浸透度
グッドウィン氏の言うNESARAが実在するならば、その規模からして、アメリカの財務省やFRBの上層部は知っているはずだが、アメリカばかりでなく、世界各国の金融機関の幹部達は既に知っていると思われる。なぜなら貨幣制度の変更は世界にも同時に影響を与えるものであり、事前に準備されておかねばならないからだ。
アメリカの銀行大手では9.11テロの頃から金本位制に基づいた貨幣制度への移行に関して徹底的な指示を受けたと言われている。そして、2001年末頃までには、かなり多くの社員が教育を受けていることを示す話がある。
例えば、代表番号に電話して、貴金属に裏打ちされた新国債の購入に関して問い合わせても、もしオペレーターがすぐに判らなくても、上司に問い合わせた後に可能であると回答が得られることを多くの人々が確認しているという。もちろん、銀行ばかりではなく、証券会社等金融機関であれば、かなりの人々が将来の変化に備えていることだろう。
アメリカでは、テレビの人気キャスターがNESARAについて言及したり、ケーブルテレビやラジオでも話題に上ったことがある。もちろん、NESARAの存在に関して懐疑的な論調が多いが、物議をかもしている。アメリカ国外において、例えば、ドイツやイギリスでもNESARAは議会で秘密裏に承認されていると噂されており、やはり既にテレビやラジオで話題に上っている。
しかし、又聞きによる限られた情報では、この情報の真偽は何とも判断が難しい。そこで、筆者は当時アメリカ在住というメリットを生かし、銀行数行に直接問い合わせてみることにした。NESARAという名前は直接表に出さなかったが、今後、金本位制が採用される予定と、貴金属に裏打ちされた金融商品の取り扱いに関して、顧客になることを装い、それとなく質問してみたのだ。多くの回答は、先のことは分からないというものであったが、新しい変化に対応して、貴金属に裏打ちされた国債の販売は可能であると回答した銀行も存在した。この回答には、正直、筆者も目を疑った。文書による回答であり、過去そのような金融商品は存在しなかったからである。
もちろん、これによってNESARAの存在が証明された訳ではないのだが、アメリカの銀行各行は今後の変化に備えている可能性を感じさせ、筆者の疑問をかえって募らせることとなった。
様々な疑問点
グッドウィン氏の言うNESARAが実在する確たる証拠は存在しない。緘口令が布かれているためにNESARA情報の詳細にアクセスできないとされるが、いくつか気になる点もある。
例えば、米最高裁判所が緘口令を布いて秘密裏に議会で承認を得ること自体が可能であるのか? そもそも議員達は事前に内容を知らずして賛成票を投じることもできないはずであり、そこまで口が堅いとも思えない。
また、ホワイトナイツによって蓄積されてきた富(現金及び貴金属)が一般市民に分配されると言われているが、その富は改心した勢力が私的に蓄積してきたものと説明されている。その富がどのような方法で国という公的資産として吸収されて、市民に分配され得るのか? 産業界による過去の不正行為に対して、国が罰金を徴収するのであればまだ理解できなくも無いが、私的資金の国への投入に関して疑問が残る。
また、富の分配が、発展途上国への援助等に回され、年金や高齢者医療保険等が改善するだけに留まらないのか? 富の分配を受けた市民が、安易に贅沢品の購入に走って、以前の状況にすぐに戻ってしまうことはないのだろうか?
しかし、将来のNESARA施行を匂わせる動きはいろいろと現れていた。
1993年に振り返れば、クリントン前大統領は、所得税を廃止して売上税を採用する未来像を語っていた。2001年には、フランスの財務大臣ローラン・ファビウス氏は衛星テレビに出演して、将来全世界が繁栄を得て、同じ法律(通貨ではなく)の下に置かれることになると語っている。また、2003年4月10日、FRB議長アラン・グリーンスパン氏は、イラク戦争による景気低迷を受けて、このような状況は「安定した経済制度によって効果的に打開され、長期安定成長をもたらすことになる」と意味深長な発言を行っている。これらはNESARAを意識した発言だったと囁かれた。
さらに、一部の富裕層はNESARAが話題となった2000-2002年頃に金買いに走ったと言われた。そして、実際に貴金属相場はその後に急激な上昇を見せた。NESARA公布により金価格が上昇することを知っての動きだったのか?
(金価格チャート 縦軸は1トロイオンスあたりの米ドル建て価格)
ついに真相解明!?
2003年6月5日と23日、シカゴのAMラジオ局WBIGは、ロン・ニューマン・ショーにおいてNESARAを紹介した。その番組には、NESARAインスティテュートを創設したハーベイ・バーナード博士が登場してインタビューを受けた。
筆者はそのラジオ番組を聞くことが出来なかったが、翌日、バーナード博士と連絡を取ることができた。そこで、バーナード博士から得た回答をここに紹介する。
(NESARA法案を書いたハーベイ・バーナード博士。2005年没。)
まず、NESARA(National Economic Stabilization and Recovery Act)の構想は1968年頃にバーナード博士自身が生み出したという。先に60年代にグリーンスパン氏が金本位制の優位性に関して記事にしている点に触れたが、彼もそれには関心を持ち、学んできた。ある時、バーナード博士は、経済が不安定化する背景には、主に数学的な方程式が起因することに気付いた。
現在まで我々が利用してきているローン計算式自体に、貧富の差を助長する問題があるというのだ。指数関数のグラフでは、返済期間が延びるほど返済額は急激に上昇する。負債者にとってもっと返済が楽な計算式が存在するはずだと考えてきたバーナード博士は、ある日、ついに新しい方程式を思い浮かんだのだった。
(指数関数のグラフ例)
R: 毎回の返済額 L: 借入金額 I: 金利 N: 返済回数
(現行のローン計算式)
(バーナード博士が考案した新しいローン計算式)
(金利7.5%、月々の手数料$25で10万ドルを借りた場合の銀行側の利益を示すグラフ。横軸は年数で、一番上の青線が従来のローン計算式に基づいたもので、残りの3本はNESARAにおける新しいローン計算式で条件を変えながら算出したもの。採用されれば、庶民はローン地獄から解放される?)
さらに、バーナード博士のシミュレーションによれば、国税庁での複雑な累進課税の計算を含む所得税徴収に要する膨大な人件費が削減され、売上税への統一で脱税ができなくなることも考えれば、所得税を廃止しても、14〜22%の売上税だけで国は健全に機能することを悟った。
その後は、その方程式と新税制に基づいた新経済システムをいかに現実世界で実現させるかということに注力し、1991年、ほぼ現在のnesara.orgに掲載中のNESARA草稿に相当する法案にまとめることに成功した。その後、自身の考案した経済システムを現実社会において採用してもらうべく、個人的に政治家や政府関係者に働きかける努力が行われた(1997年に『Draining the Swamp』を出版)。
しかし、なかなかバーナード博士の考えに賛同する者は現れなかった。そこで、世界中の人々に自分の考案したNESARA法案を知ってもらうべく、2000年7月に入って、インターネット上で公開することにした。
それによって、特別大きな変化は現れなかったが、2000年末頃になって不思議な変化が現れたという。バーナード博士によると、Dove of Onenessと名乗る人物(グッドウィン氏)が、National Economic Security And Reformation Actという異なる名前のNESARAを紹介するようになったというのだ。バーナード博士にとっては、明らかに自分が考案したNESARA(National Economic Stabilization and Recovery Act)の盗用であった。例えば、所得税を廃止して、新たに採用される売上税の税率を14%と設定している点や、新しいローン計算式まで同じであった。似ている個所があるというよりも、ほとんどが同じであったのだ。
しかし、奇妙なことは、NESARA法案はまだ議会に提出すらしていないにもかかわらず、既に秘密裏に承認され、公布が待たれる状態であるとグッドウィン氏が主張していただけでなく、地球外生命体や高次元の存在も地球におけるNESARA施行をサポートしているなど、バーナード博士にとっては荒唐無稽と思われることまで語っていたことだ。
さらに不可解なことは、バーナード博士が創設したNESARAインスティテュートのウェブサイトは、元CIA長官で、元大統領であるジョージ・ブッシュ氏(現ブッシュ大統領の父親)によって所有されているものであり、NESARAインスティテュートの情報は撹乱目的の偽情報であるというレッテルが貼られた点だった。
しかし、バーナード博士自身は、グッドウィン氏の主張に関してはまったく気にしなかった。2003年4月下旬頃より、ようやく自分が推し進めてきたNESARAに進展を得たのである。
例えば、コロラド州選出の上院議員ウェイン・アラード氏(共和党)がバーナード博士のNESARA法案に関心を示した。2003年の取材当時、まだ法案として議会に提出される段階には至っていないが、その可能性は十分存在するとのことだった。そして、その頃から、NESARAへの関心も急増したのをバーナード博士は感じ取った。
バーナード博士が立ち上げたnesara.orgのサイトへのアクセス数は2003年5月頃から急に増え、国別のアクセス状況では、アメリカ、カナダ、オーストラリア、日本、オランダ、ドイツ、フランス、スイスという順番である。そして、興味深いことは、米財務省をはじめとする政府機関からのアクセス数も急増したというのだ。
(コロラド州選出の上院議員ウェイン・アラード氏、共和党)
グッドウィン氏等が推し進めるNESARAが注目を集めた背景も存在するのかもしれないが、NESARAが一部の市民だけでなく、政府機関からも注目を集めるようになったのは興味深い。
「グッドウィン版NESARA」支持者達はサイバーカルト集団か?
(Doveレポート購読者達に向けてメッセージを書くシャイニ・グッドウィン氏)
さて、このような背景を考えると、グッドウィン氏が提供する情報こそが偽情報と思える。Dove of Onenessこと、シャイニ・グッドウィン氏は、数年前に社名をDove、事業内容をコンピューター・サービスとしてビジネス登録を行っていた。
彼女はNESARAに関する情報を提供し続けるため、寄付金を募っており、その寄付金はギフトという名目でDove宛ての小切手で受け取ってきた。
これはまったく巧妙なビジネスだ。現在、61歳の彼女は、これまで様々な仕事を転々としてきた。自分で起業して破産させた経験もある。
10年程前にオメガ・トラストと呼ばれる悪名高き投資詐欺に引っかかった経験があり、どうやら、その手法を学び、今度は自分で利用した可能性が高いとされる(オメガ・トラストの創設者は有罪判決を受け、服役中)。
というのも、オメガ・トラストへ投資した被害者達に、NESARAが公布されれば、予定された額($100の投資が$5,100に化ける)を回収できると主張し、NESARA詐欺との関連を認めるかのような発言をしていたためだ。
因みに、2003年当時、彼女はIRS(米国国税庁)に1万2千ドルの借金を抱えながら、移動可能な簡易住居で細々と暮らしていた。
そして、ついに問題は表面化した。2006年6月18日付けの米『News Tribune』紙によると、シャイニ・グッドウィン氏が偽NESARA情報を流布し、サンフランシスコ在住の老人から1万ドルを騙し取ったとして、州法務省の消費者保護課に訴えが届いたのだ。被害者の娘によると、実際の被害総額は数十万ドルに及ぶという。
これまで、繰り返し闇の勢力の妨害に伴う資金不足でNESARA施行が遅れていると説明し(これは寄付金や投資を行った人々に対する弁解や、新規の寄付・出資者獲得のための逃げ口上とされる)、プライベートな電話を通じて、500万ドル(約5億円)以上の規模で出資・寄付を募っている。
本国アメリカでは数年前に偽NESARA騒動は解明され、(出資・投資に関わった当事者以外)既に収束している状況であるにもかかわらず、当事国ではない日本においては、本国の状況が掴み難い点もあるためか、不可解にも近年になってNESARAネタとリンクさせた貴金属投資が話題となるケースがあり、情報源や事実確認を怠る人々が犠牲となっている状況だ。
読者もあくまで自己責任で注意して頂きたい(fourwinds10.comやnesara.usのサイト運営者、それらNESARA情報にリンクを張るサイト運営者、さらにシェルダン・ナイドル氏、ジェニファー・リー氏、ナンシー・テート氏らも協力者として疑われている)。
尚もNESARAは存在する
しかし、これでNESARAが否定されたことにはならない。バーナード博士の考案した本物のNESARAは存在する。グッドウィン氏が脚色を加えて、信憑性を落した可能性は否めないが、ある部分はそのまま伝えられ、良くも悪くもNESARAの名前を世に知らしめる宣伝効果を得た。だからこそ、2002年、NESARAに関する問い合わせが殺到したことを受けて、米財務省はNESARA法案が議会に提出されておらず、可決されてもいない事実を説明した。
もちろん、当初NESARAとはバーナード博士が考案したものであると財務省は認識していた。ところが、問い合わせをしてきた人々の大半がグッドウィン氏の主張する怪NESARA論者であったことに気付いたのが理由と思われるが(誤解を避ける目的もあったのだろうが)、しばらくして財務省はNESARAに関する回答をホームページ上から削除した。
そして、皮肉なことに、NESARAを懐疑的に捉える政治家・経済学者達が一気に増えてしまったのだ。そこで、まぎわらしいと同時に、如何わしいNESARAは敬遠されることになった。
そのため、近年、代案的に急速に注目を浴びているのが、NESARAと酷似したフェア・タックス法案やG・エドワード・グリフィン案である(表を参照)。NESARA法案は、税制面も貨幣政策面も幅広く網羅した、おそらく完成度の高い法案とも言えたが、グッドウィン氏が流布した怪情報が逆風となり、まだ議会への法案提出にすら至っていない。
一方で、所得税、資本利得税、遺産・贈与税を廃止し、税収は23%の売上税に統一するフェア・タックス法案が可決を待たれる有力候補となっている。また、FRBを解体し、金本位制を採用するG・エドワード・グリフィン案はまだ議会に提出されていないが、共和党から大統領候補として名乗りをあげたロン・ポール氏を始め、一般に高い評価を得て、期待されている(但し、グッドウィン版NESARAの影響と思われるが、類似案を評価しながら、ロン・ポール議員はNESARAのことはまったく評価しなかった)。
要点部分を比較すれば、NESARA法案一本の方が格差社会の是正に貢献しそうに思える部分もあるが、フェア・タックス法案とG・エドワード・グリフィン法案の2本を合わせたものと、NESARAは極めて近い内容と言える(NESARAにおいて生活必需品には非課税であり、事実上低所得者は納税免除)。
怪NESARA情報の功罪
このような流れを振り返ると、NESARAがようやく本格的に米政界で取り上げられようとしていた状況を潰してしまった張本人は、実は珍事を起こした怪NESARA情報の支持者達であったと言える。
しかし、過熱したNESARA運動の影響は、良くも悪くもアメリカ市民ばかりか、世界中の人々の目を覚まさせた。NESARA情報が世界的に広まったのは、9.11テロの疑惑を振り返りつつ、イラク戦争の是非を話題にし始めた頃であり、世界中の人々がアメリカの行動に疑問を抱いた時だった。
そんな時、グッドウィン氏は、アメリカが憲法の精神を無視して暴走していることを痛烈に批判して、怪NESARA情報の普及に努めたのだ。彼女の主張に裏付けは取れなかったが、世界中の人々が彼女の発信したNESARA情報に熱狂した理由は理解できなくも無い。
現在の世界情勢を見れば一目瞭然である。大国のリーダー達は国民の意志を反映しない行動を起こしており、それは世界平和に逆行しているとすら思われるからだ。だからこそ、反戦デモにNESARAをメッセージに掲げるグループが参加していたと言えるのではなかろうか。
アメリカ経済は再生するか?
昨今、米ドルの基軸通貨としての地位が揺らいでいることが指摘されている。確かに、9.11テロとイラク戦争を体験して、これまで続けてきたアメリカによる利己的な外交政策が疑問視され、中東諸国がドル決済を嫌うだけでなく、ロシアや中国などの大国も国際的な競争力を増し、独自路線を目指している。そのような中、現在のアメリカの懐事情と景気の動向を考えれば、しばらく米ドルの競争力は弱いかもしれない。
一方で、NESARA、フェア・タックス法案、G・エドワード・グリフィン案などにより、FRBの解体、金本位制の復活、所得税の廃止など、日本人には信じがたいことかもしれないが、噂や冗談のレベルではなく真剣に検証されている。また、北米統一通貨アメロの登場も検討されており、現在のドル安に対して、強いアメリカ復活への秘策はいくつも用意されていると言えるかもしれない。
NESARAをキーワードに、アメリカの状況を調査すると、将来に向けて、様々な法案が長い準備期間を経て育まれてきているのが見えてくる。その状況を見ると、アメリカにおける知識人の層の厚さと懐の深さを感じざるを得ない。また、それと同時に、日本の未来に危機感を抱かざるを得ないのは筆者だけであろうか。
話題の発端は怪しいNESARA情報にあったとはいえ、アメリカが合衆国憲法の原点に立ち返る動きを見せれば、「NESARA的」社会がやってくる可能性はあり得ることだ。そして、理想的な社会を目指し、使命感を掲げた、言わば霊的思想に導かれ、本来あるべき方向性を模索すれば、多くの人々が同時に「NESARA的」ビジョンを抱くことは決して不思議なことではなく、むしろ必然的な軌道修正と言えるだろう。
筆者は経済の専門家ではなく、怪NESARAもNESARAインスティテュートによるオリジナルNESARAも、支持・不支持できるほどの検証能力はないが、今、アメリカ社会は確実に改革へ向けた準備を進めている。今後NESARA法案が実際に議会に提出されるかどうかは分からないが、いくらかの類似法案が可決されることにより、「NESARA的」な将来像が現れてくる段階に至りつつある(下記の表を参照)。一見突飛とも思われる斬新な改革案を、議論できるような環境が日本国内でも備わっていくことを期待したい。
表: NESARAに替わる法案
NESARAとは異なるものの、酷似した代替的な法案や法案草稿が存在する。FairTax法とG. Edward Griffin案の両方が実現した場合、NESARAが実現したものと誤解されるかもしれない。 |
税制面での改革
※NESARAとの比較表 |
貨幣政策面での改革
※NESARAとの比較表 |
1) FairTax Act of 2007 (H.R.25 & S.1025) FairTax法案は、ジョージア州選出の上院議員ジョン・リンダー氏(共和党)が1999年7月に議会に提出して以来、数度改訂されてきた法案。所得税、資本利得税、遺産・贈与税を廃止し、23%の国家売上税(実質30%*の消費税に相当)に統一。
非課税対象は、中古品、預貯金(投資・金融商品含む)、教育費、輸出品、仲介品など。貧困層に対しては毎月リベートを支給することで対応。近年、FairTax法の採用を求める動きは高まっており、リンダー氏は2005年に『The FairTax Book』を出版し、FairTax法への支持を呼びかけている。
現在までにFairTax法を支持する議員は下院で72人、上院で4人に増えている。 |
a) The Monetary Reform Act (MRA)
通称MRA。FRBを解体し、貨幣の発行は政府(財務省)が行う。NESARAと異なり、他銀行への準備金を100%確保。マネーサプライは固定した年率で増やす。議会は運営と監督の両方の役割を果たす(NESARAにおいては、議会は監視役のみを果たす)。 |
2) Individual Tax Freedom Act of 2001 (H.R.2717)
Fair Taxと類似するもので、W・J・トーザン議員が2001年8月に議会に提出した法案。所得税、資本利得税、遺産・贈与税を廃止し、15%の国家売上税に統一。但し、生活必需品にも一律に課税。低所得者へのリベートは給与に反映し、雇用者側に負担が掛かるシステムを採用。現在まで、支持議員数は10人。 |
b) G. Edward Griffin案
『The Creature from Jekyll Island 』の著者G・エドワード・グリフィン氏による案で、NESARAと類似するが、FRBを解体し、貨幣の発行は政府(財務省)が行う。金本位制を採用。他銀行への準備金を100%確保。ロン・ポール議員も評価。 |
*23%の小売税が実質30%となる理由は、旧式の計算法が採用されているためである。かつては、税込100ドルの商品のうち、23ドルが税金で、77ドルが商品本体価格の場合、税率を23%と考えたのである。今日、世界的に普及している計算方法では、30%の消費税に相当する。 |
※当記事及び写真の無断転載を禁じます。
■■■■■■■■■■■■■■ 参考 ■■■■■■■■■■■■■■
○NESARAの真偽
海外では既にNESARAの実情は理解されており、ウィキペディア英語版においても説明されているが、日本国内ではなおも誤解している人々が存在するようだ。
○偽NESARAへの警告
下記はバーナード博士(NESARAインスティテュート)が偽NESARAの普及により被害を被った状況と、偽NESARAへの警告を報じたページ。諸メディアでのNESARA報道に関するリンクが含まれる。
http://nesara.org/articles/the_real_nesara.htm
○下記はグッドウィン氏が自身のサイト上で、NESARA施行までに資金が足りないことを説明し、人々へ超高額投資を求めたページ。電話によるプライベートな交渉でビジネスを行う手法が見て取れる。
http://www.nesara.us/pages/key_for_nesara.htm
○NESARAの現状
アメリカで法が施行される(効力を発生させる)ためには、議会に法案が提出され、審議の上、承認される必要がある。
2008年4月現在、NESARA法案自体が議会に提出されていない為、その先のことはまったく考える必要がない状況であるが
(議会に提出された際に中身の全貌は自ずと分かり、相応しくないものであれば、単に議員は承認しないだけであり、
確定していない未提出の中身を国外の部外者が議論する段階ではない)、
法案提出の有無及びその後の最新状況は、以下で確認頂きたい。
http://nesara.org/main/status_of_the_bill.htm
○NESARA関連映画
Waiting For NESARA(予告編) - 映画 Waiting For NESARA
○チャネリング情報
下記のリンクは、ジャーナリストとしては取り上げることが不可能で、あくまでも裏付けの取れないオカルト情報である点、読者に警告しておくが、スピリチュアルな人々にとっては面白いメッセージと言えるかもしれない。
いかにDoveがエゴの罠に落ちて、本来のNESARAを伝える役目から外れ、偽NESARAを伝えるビジネスに手を染めるようになったのか、説明されている。
また、ケイ・ミズモリが指摘してきたように、チャネリングや予言に具体的かつ詳細な情報が含まれることは原則有り得ない点(バーナード博士によるNESARA以外に抽象的な概念としてのNESARAが霊的に存在する可能性は肯定も否定もしない)や、「NESARA的な社会はいずれ訪れるだろうが、その中身はDoveの語る偽NESARAではない」という点をスピリチュアルな側面で説明したものと言えるかもしれない。
但し、Doveの意識が2003年から変化したと説明されているが、2002年の段階で、既にDoveはバーナード博士によるNESARAを盗用し、有り得ないはずの具体的な詳細を触れていた点では、やや矛盾を抱えたチャネリング・メッセージである。
チャネリングによる人々への影響力を存続・維持させるべく、チャネリング情報自体の信憑性を落とさぬよう、弁解に努めたメッセージとも受け取れるかもしれない。
http://www.matthewbooks.com/mm/anmviewer.asp?a=61&z=2
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