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記事&エッセイ

ブッシュ大統領再選のシナリオ
2004年11月 未掲載
盟友オサマ・ビンラディンを利用したブッシュ大統領の選挙戦略!?
2004年11月2日、アメリカでは大統領選挙が行われた。アメリカ国外では、大義名分も無くイラク戦争を始めたブッシュ大統領に対して手厳しい見方が大勢を占めたため、民主党ジョン・ケリー候補の当選が当然であると考えられていた。そのため、アメリカ国内でのブッシュ大統領に対する評価がどのように下されるのか、世界は固唾を飲んで見守った。当初、アメリカ国内でもケリー候補有利で選挙キャンペーンは始まったが、投票日が近づくにつれて、アメリカ国内の世論は拮抗していった。ブッシュ陣営はテレビCMを使ってケリー候補を批判するネガティブ・キャンペーンに精を出し、そのCMに影響を受けた有権者達も多く現れた。だが、ケリー陣営に深刻な打撃を与える決定打には到らなかった。選挙前に3回行われたディベートの結果からも、若干ケリー候補が優勢かと思われた。しかし、ブッシュ陣営にとっては、まだまだ隠し球が残されていた・・・。
選挙直前の10月29日、国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者によるビデオ声明が、カタールの衛星テレビ「アルジャジーラ」で報じられたのだ。その声明の中で、ビンラディン容疑者は9.11テロを起こしたことを認めると同時に、新たなテロを警告した。新聞各紙は、目前に迫った大統領選挙で、現職のブッシュ大統領を落選させることが目的かと推測したが、決してそのようなことはなかった。
おそらく読者は選挙直前に行われたビンラディン声明は、単に偶然のタイミングで出てきたもので、選挙戦略とはまったく関係ないと思われるだろう。しかし、そう簡単に切り捨てられる問題ではないのである。
 そもそもアルカイダとは、1979年のソ連によるアフガニスタン侵攻に対抗する目的で、パキスタンの協力を得て米CIAが作り出した組織である。米当局の期待通りにビンラディン容疑者もアルカイダも動いていると考えて矛盾は無いのだ。事実、9.11テロの実行犯の一人とされた元妻の証言によると、夫(テロ犯)は、アメリカ政府から定期的に金銭を受け取ってきたスパイであったことを証言している。筆者は学研『ムー』誌2003年10月号以来、何度か述べてきているように、9.11テロの真犯人はブッシュ政権であったと言えるだろう。9.11テロの目的は、1941年の真珠湾攻撃で採用された戦略と同様に、あえて自国民に大量の犠牲者を許すことで、アメリカ市民ばかりか世界中の人々に対して、イスラム世界に諸悪の根源があると説得させ、イスラム世界に対して戦争を仕掛けるきっかけを作り、それを正当化させることにあったと考えられるのだ。
映画『華氏911』の監督マイケル・ムーア氏が指摘したように、ブッシュ一族とビンラディン家は石油ビジネスにおいて親密な関係がある。そのような背景も考えると、ビンラディン容疑者は、米当局の意向を受けて、悪役を演じることに合意していたと考えるのが妥当である。だから、当分の間、米政府はビンラディン容疑者を本気で捕まえるつもりは毛頭ない。
例えば、1996年、ひそかに米国を訪れたスーダンのエルファティ・エルワ国防相(当時)は、国内に亡命して国際テロ組織「アルカイダ」の基盤構築を進めるビンラディン容疑者に国家転覆の危機を感じ、CIAに身柄の引き渡しを打診した。CIAにとって、ビンラディン容疑者は当時から、サウジアラビアの米軍施設テロなどで最重要の“指名手配犯”。しかし、CIAはなぜか同氏の引き受けを断り、スーダンからの国外追放を国防相に勧めた。
また1998年夏、アフガンのタリバン政権さえもビンラディン容疑者の処遇に手を焼き、サウジアラビアへの引き渡し交渉を持ちかけてきたのに、CIAは一貫して消極的な対応をした。
さらに、2001年7月、ビンラディン容疑者は腎臓病を患い、アラブ首長国連邦のドバイにあるアメリカン病院に入院していたが、現地駐在のCIA代表者も見舞いに訪れている。
そればかりではない。9.11テロ事件の1週間後、無実のイスラム教徒達が厳しい取調べを受けている中、当時アメリカに居たビンラディン一族24人余りが、サウジアラビア政府がチャーターした自家用ジェット機でヨーロッパに脱出している。この事実を報じた『The New Yorker』誌や『National Review』誌によると、ビンラディン一族は事情聴取も受けず、FBIはすぐに出国許可を出しているのだ。
 このような背景を考えて、再度、大統領選挙の直前に公開されたビンラディン容疑者によるビデオ声明を振り返ってみよう。ブッシュ大統領は、必死にテロの脅威を訴え、イラク戦争を正当化しようとしてきた。だが、9.11テロとイラク戦争との間に関連性は無かった。だからこそ、目の前に迫るテロの脅威に対して、断固として立ち向かう姿勢をアメリカ市民に示すことは選挙戦を勝ち抜くためには重要なファクターだった。そして、ブッシュ大統領による外交政策自体がテロの脅威を誘発させていると見た対立勢力に対して、「テロの脅威は本物で、迅速な対応が必要」なことが示せれば、これ以上に強いサポートはない。そこで、悪役を演じる役目を担ったビンラディン容疑者が、米当局の意向を受けて、絶妙のタイミングでビデオ声明を出してきた可能性が考えられるのだ。
このような形で、選挙直前のビンラディン声明は、結果的にブッシュ大統領の再選を後押しすることになった。しかし、ブッシュ大統領の選挙戦略はそれだけではなかった。さらに大掛かりな必勝策が水面下で進んでいたのである・・・。

2000年の不正選挙
 ご存知のように、2004年の大統領選挙では、オハイオ州での大接戦を制して現職のブッシュ大統領が再選を果たした。ケリー候補は、ブッシュ大統領によるイラク戦争に厳しい目を持つ都市部で順調に得票を伸ばしたが、ブッシュ大統領は南部の保守層やキリスト教福音派による票を確実に積み重ねたのだ。これが大半のマスコミによる解説であった。しかし、実のところ、それでは正確さに欠け、事の真相を説明できていないのだ。
 2000年の大統領選挙を振り返ってみると、大接戦となったフロリダ州では、次のような問題と不祥事が発生していた。民主党の牙城と言われたパームビーチ郡では、パンチカード式投票用紙が紛らわしく、間違えて候補者を選んでしまう人々が続出。大半がゴア票とみられる2万票前後が無効票になった。また、民主党支持者の多い黒人居住区においては、投票所までの道路が封鎖されたり、投票所までたどりつけても、犯罪者と名前が同一・類似しているとか、事前に不在者投票を行っているなど、あらぬ疑いを掛けられ、投票すら出来なかった人々が6万人は出たのだ。このように、民主党支持者の多い地区で行われた、州当局による大規模な選挙妨害と不手際により、アル・ゴア候補は8万票あまりを無駄にした。
この状況に怒りを露とした有権者達は、プラカードを持って選挙のやり直しを要求するデモを起こした。フロリダの州知事はブッシュ候補の実弟ジェブ・ブッシュ氏が務めていたことから、共和党寄りの州当局によって計画的な妨害が行われたことは明らかだった。
当初、地元テレビ局を中心としたマスコミは、この問題をニュースで正確に報道したのだが、しばらくすると、「再投票」ではなく、「再集計」を求めたデモであるとすり替えた報道が行われ、真実が歪められて世界中に伝わっていった。
実際のところ、訴訟問題にも発展したが、得票差が僅かであったことから、焦点となったのは「再投票」ではなく、「再集計」であった。そのため、そもそも投票を出来なかった人々や、集計もされなかった票のことが考慮されることは無かった。そして、最高裁判所の判事に共和党系が多かったことが影響して、再集計も完全に終わらぬうちに、わずか数百票の得票差でブッシュ候補がフロリダ州を制して大統領に確定したのだった。

弁護士団と監視員達がやってきた
2004年の大統領選挙においても同様の不正が行われる可能性があり、民主党陣営はそれを防ぐ対策を考えた。そこで、民主党の下院議員9人が国連のアナン事務総長に対して、国連が選挙監視団をアメリカに派遣して欲しいと頼んだのだ。その9人は、特に不正行為のターゲットとされた黒人やヒスパニック系を代表する議員達であった。そして、旧ソ連諸国などの選挙を監視してきた全欧安保協力機構(OSCE)は約100人を今回のアメリカ大統領選挙に派遣した。
また、オハイオ州やフロリダ州のような激戦州では、何か問題が生じればすぐに訴訟を起こせるよう、両陣営ともに数千人の弁護士達を待機させた。そればかりではない。司法省も25州86郡の投票所に、前回のほぼ3倍に当たる1090人の公的な監視員を派遣した。
先進国であるアメリカが、選挙監視団の派遣を国連に求めるとはなんとも恥ずかしい限りであるが、このように厳重な警戒のもとに今回の大統領選挙が行われ、本来ならば不正は生じるはずはなかった。
ところがである。現実は、2000年の大統領選挙時をはるかに上回る不正行為が蔓延ったのである。

インターファックス通信によると、全欧安保協力機構(OSCE)の一人としてロシアから派遣された議院法学者のアレクセイ・オストロフスキ氏は、今回のアメリカ大統領選挙の実態を目のあたりにして、大変なショックを受けたという。そして、電話インタビューで次のように発言した。
「私の意見では、選挙結果が操作された可能性があり、その可能性は、著しい選挙法違反からきている」
そもそもオストロフスキ氏は、アメリカ市民が投票所に来る際、まったくID(身分証明書)を提示しない事実にショックを受けたという。「これでは、“私はミスター・スミスです”とただ名乗るだけで、投票が許されるようなものだ。同じ人物がある投票所から退出して、また別の投票所に行って、同じ手続きで再び投票できてしまう」
つまり、多くの投票所では、自分の名前を名乗り、その名前が有権登録者リストに確認されれば、それだけで投票が許されていたと言える。
さらに、テレビ局大手のMSNBCによると、オハイオ州ウォーレン郡の集計所では、投票日の夜、テロ対策という名目で選挙監視団を締め出し、密室の中で開票作業が行われた。デンマーク他ヨーロッパから来た選挙監視団は、オハイオ州やフロリダ州の激戦区で見学を拒否される事態を体験し、先進国であるはずのアメリカの選挙システムに懸念を表明した。

電子投票システムは信頼できるのか?
前回、フロリダ州でのパンチカード式投票用紙が紛らわしく、間違えて候補者を選んでしまう人々が多く出た問題もあり、再発を防ぐため、2004年の大統領選挙においては、タッチスクリーン方式の電子投票システムが多くの地区で採用されることになった。しかし、電子投票システムは様々な問題を抱えたものであった。
例えば、(1)ほとんどの場合、物理的な記録が手元に残らず再集計が出来ない、(2)機械の故障によりデータが消える可能性がある、(3)誤動作により不正確な数値が弾き出されてしまう可能性がある、(4)集計システムがどのようにプログラムされているか不透明であることなどが挙げられる。
実際、過去の選挙において、(2)と(3)の問題が発生したことは報告されている。また、2004年11月4日、フロリダ州フォートローダデール発のAP通信によると、今回の大統領選挙で採用された電子投票においても、トラブルや苦情が1100件ほど民間の選挙監視団体に報告されている。6州の計32人からは、候補者を確認する段階で、選んだのとは別の候補者が画面に現れたとの連絡があった。フロリダ州クリアウォーターに住むロバータ・ハーベイさん(57)は、ケリー氏に投票するまでに6回以上、時間にして10分ほど、投票機の操作をやり直したと報告した。投票所のスタッフが濡れティッシュで投票機の画面をふき、指ではなく消しゴム付き鉛筆の消しゴム部分で画面に触れることで、やっとケリー氏に投票することが出来たという。そして、不思議なことに、このようなトラブルは、ケリー候補に投票しようとした民主党員ばかりが体験したという。つまり、最後の確認画面で別の候補者が現れていたことに気付かなかった場合、自分の意に反してブッシュ大統領を選んでしまった人も相当数出ていたと推測されたのだ。
さらに、MSNBCの番組『カウントダウン』によると、フロリダ州では、圧倒的に民主党地盤であるいくつもの郡で、奇妙にもブッシュ票がケリー票を数倍も上回った事実が報じられている。例えば、ベーカー郡ではブッシュ7738票・ケリー2180票、ホルムズ郡ではブッシュ6410票・ケリー1810票、ディクシー郡ではブッシュ4433票・ケリー1959票、ラファイエット郡ではブッシュ2460票・ケリー845票、リバティー郡ではブッシュ1927票・ケリー1070票といった具合だ。さらに、ジャーナリストのグループが運営しているConsortiumNews.comによると、フロリダ州の47郡では、有権者登録された共和党支持者の数よりも多くブッシュ票が入っていた。
ブッシュ大統領に対してだけ有利に投票機や集計機が誤作動する可能性は極めて低い。得票操作が行われたと疑われ、今後会計監査院(GAO)に再調査がねられることになっている。

投票機メーカーとの密約
ところで、このような電子投票機を製造する企業には、ディーボルド社、ES&S社、セコイア社などがあるが、最大のシェアを誇るのがディーボルド社である。プログラムの専門家達は、ディーボルド社の作った集計システムのソース・コードを調べたところ、セキュリティーに大きな欠陥があり、「最悪」とも言えるプログラムであることが判明した。ハッカーによる攻撃など、セキュリティー対策がほとんど施されていないばかりか、得票操作が可能で貧弱なプログラムとなっていたのだ。その指摘を受けて、ディーボルド社はプログラムの修正に対応したが、どのように修正したのか、その後の公開は拒否した。
問題はそれだけではなかった。本社をオハイオ州に持つディーボルド社の最高経営責任者(CEO)ウォルデン・オデル氏は、「2004年の大統領選挙において、オハイオ州ではブッシュ大統領に勝たせるようにする」という趣旨の文書を共和党陣営に送っていたことが暴露されたのだ。これは、共和党寄りのディーボルド社が、明らかに得票操作を予定していたことを示すものであった。
これを受けて、オハイオ州では、電子投票システムの導入を疑問視する声が上がり、大半の郡ではこれまで通りパンチカード式投票機が利用されることになったが、全米で約3割の投票所が電子投票システムを採用したため、得票操作に対する疑念は解消された訳ではなかった。
そして、今回大接戦が繰り広げられたのがオハイオ州であった。ブッシュ大統領とケリー候補の得票差は約13万6千票で、開票されていない暫定票が約17万5千票あった(暫定票の内訳が判明するのは12月上旬)。しかし、暫定票の大半をケリー候補が獲得する可能性は極めて小さいことから、ケリー候補は開票前の時点で敗北宣言を行った。
そのさも当然である。オハイオ州のボブ・タフト知事は共和党員であり、ブラックウェル州務長官はブッシュ・チェイニー・選挙キャンペーンの共同議長を務めた人物である。さらに最高裁判所の判事達も大半が共和党系であるため、どのように訴訟を起こしても、民主党に勝ち目は無い。また、訴訟を起こすことで、アメリカ市民にネガティブな印象を与えることにもなり、のちの政治家生命を考えれば、当然の選択であったのだ。
ところが、大統領選挙を終えて数日経つと、ケリー候補の敗北宣言は早すぎたという声も上がり始めた。というのも、オハイオ州では、新たに9万2千票あまりが集計されていなかったことが判明し、暫定票の多くはケリー票であったことも分かってきたのだ。つまり、ケリー氏が逆転勝利する可能性があったのだ。

廃棄された票
オハイオ州では、前回共和党が接戦を制した。また、大半の郡では従来のパンチカード式投票機が採用された。その点で、ディーボルド社による得票操作が行われた可能性は見極めがたい。しかし、得票操作は少なくとも別の方法で行われていた。11月3日の時点で、オハイオ州では票が大量に破棄された事実が報告されているのだ。この事件は、最初インターネット上の掲示板で報告されたものだが、筆者自身が関係者と連絡を取り、情報確認及び写真提供を受けたものである。

(票の詰ったバッグを乗せたピックアップ・トラック。集計所本部まで届けられることはなかった。)

シンシナティでケリー候補の選挙マネージャーを行っていたステファン・スカーツ氏は、ケリー候補寄りのマイノリティーや学生達の多い選挙区を担当していた。彼の仕事の一つは、投票箱と票の詰ったたくさんのバッグが集計所に届けられるのを確認することで、選挙スタッフの乗った車を追いかけた。ところが、その車は直接集計所に向かわず、近所の公立学校に行った。そこで、票の詰ったバッグは何者かに手渡された。その時、スカーツ氏が不審に思ったのは、票の詰ったバッグの受け渡しに際して、何の署名も交わされなかった事だ。そして、そのバッグは40以上もの投票所の票と共にピックアップ・トラックに乗せられた(写真参照)。スカーツ氏はさらにその車を追いかけて、集計所の駐車場に入っていくのを確認したが、その後、票の入ったバッグが本部に届けられることなく、いつの間にか消えてしまったという。もう一つスカーツ氏が気付いたのは、そのピックアップ・トラックには、「2004年ブッシュ・チェイニー」のステッカーが貼られていたことであった。
このような票の廃棄は全米各地で行われているとジャーナリストのグレッグ・パラスト氏は言う。例えば、2000年の選挙時、ニューメキシコ州のリオ・アリバ郡では、すべての票が廃棄されたとある政治から教えられたという。

有権登録者リストからの抹消
票の廃棄処分以外に、得票操作で最もポピュラーな方法は、有権登録者リストからの抹消である。つまり、有権者登録を済ませている人が、いざ投票所に行ってみると、名前がリストに載っていないと言われて、投票を拒否されたり、暫定票扱いでの投票となる手法である。
映画『華氏911』の監督、マイケル・ムーア氏は、今回の大統領選挙で独自に選挙監視団を派遣し、黒人居住区において有権者が差別、威圧、そして投票妨害されていた場面をビデオカメラに収めている。そのドキュメンタリーの出演者達は、皆有権者登録を行っていたにもかかわらず、リストに名前が存在しないとして、暫定票扱いにされたり、投票できなかったことを訴えている。ムーア氏はこの映像を次回作で使用するつもりは無く、不正選挙の実体を訴える市民団体に提供するという。
グレッグ・パラスト氏によれば、共和党委員会が発表した計画を実行していれば、激戦となったオハイオ州では3万5千人の投票が阻止されたはずであるという。また、南部の市民監視団体デモクラシー・サウスによれば、投票日の約1ヶ月前に締め切られる有権者登録において、民主党を強く支持する傾向のある黒人達は、白人の3倍拒否されたという。
さらに、オハイオ州の、黒人やマイノリティーが多く住む地区の投票所では、異例に少ない数の投票機が設けられ、長蛇の列が出来た。投票まで5時間も待たされた有権者達も居り、投票をあきらめる人々が現れることを期待して、共和党寄りの州当局が行った妨害工作であったとされる。


そのようなこともあり、オハイオ州では、共和党陣営による一連の不正行為に怒った市民達が立ち上がり、州議会前でデモを行った。
今回の大統領選挙における不正得票操作に関しては、大手MSNBCをはじめ、様々なニュース・メディアが続々と報道を始めており、抗議運動は全米に広がる様相を見せてきた。ハーバード大学では、選挙翌日から「またしてもブッシュが国を盗んだ」と抗議活動が始まった。コロラド州の高校ではブッシュ再選に怒った生徒が校内を占拠した。サンフランシスコでは、選挙翌日におよそ2000人がブッシュ再選に抗議し、57人が逮捕された。そして、シアトルでも同じような事が起こった。
また、今回の大統領選に出馬したラルフ・ネーダー氏も、オハイオ州、フロリダ州、ニューハンプシャー州、ノスカロライナ州での電子投票の集計監査を要求した。さらに、疑惑を耳にした下院議員達は会計検査院(GAO)に今回の大統領選挙の調査を依頼した。
電子投票システムでの得票操作に加えて、票の破棄や有権登録者リストからの抹消といった選挙妨害が行われていれば、どのような選挙結果となるかは、初めから分かっていたのと同然である。

なぜ出口調査結果と実際の投票結果が著しく異なるのか?
多くのアメリカ市民は、自分達が支持する政党や候補者の名前が書かれたステッカーを車に貼り付けたり、庭にサインを立てたりして、自信を持って意志表示を行う。そのようなこともあり、通常、投票直後に行われる出口調査をもとにした結果予測は、実際の結果とほとんど狂いが無いと言われている。ところが、2000年の大統領選挙と今回の大統領選挙は例外的で、出口調査と投票結果があまりにもかけ離れていた。このことは、2004年11月4日付のワシントン・ポスト紙でも報じられており、出口調査から、オハイオ州を含めた多くの州でケリー候補が優勢であったことがメディアを通じて伝えられていた。
例えば、CNNがフロリダ州で行った出口調査によれば、最終的にブッシュ大統領は5,355票ケリー候補を上回るという予測であったが、結果は約377,000票上回るものであった。また、ウィスコンシン州での出口調査では、ケリー候補が7%以上ブッシュ大統領を勝っていたが、実際の結果は、実に7%も異なり、わずか0.4%差でブッシュ大統領を退けた。さらに、ニューメキシコ州での出口調査では、ケリー候補が3.8%ブッシュ大統領を上回っていたが、実際の結果は、ブッシュ大統領が逆転して、1.1%ケリー候補を上回るものだった。同様に、ミネソタ州では5%、ミシガン州でも5%、出口調査と実際の投票結果との差が現れ、いずれもブッシュ大統領が結果的に高い数値を得た。そして、アメリカのすべての州で調査が行われた結果、ケリー候補が結果的に高い数値を得た州はほとんど存在しなかったのである。
なぜ出口調査の結果と、実際の投票結果に著しい違いが現れるのか? ワシントン・ポスト紙では、時間帯によって、投票した人々の性別、年齢層に偏りが出た可能性が指摘されていたが、ウィスコンシン州のように7%という大きな狂いが出たことは、簡単に説明できるものではない。
既に触れたように、電子投票による得票操作、票の廃棄、そして有権登録者リストからの抹消という可能性しか考えられないとグレッグ・パラスト氏は分析している。

フロリダ州、再び!
特に疑いが掛けられるのは、電子投票システムを比較的多く採用してブッシュ大統領が勝利した、大都市を抱える州になろう。そのような条件で思い当たる州はフロリダである。
そもそもフロリダ州は、マイアミのような大都市を抱え、黒人有権者も多いことから民主党に有利な地盤である。共和党は、中流階級に有利な税制を採用し、お金のある人々が優先的に医療を受けられる権利を保護して、はなから健康保険制度の導入など考えない。普通ならば、一般庶民や貧困層にとっては、リベラルで国内問題を重要視する民主党の方が魅力的に映る。
さらに、2000年の大統領選挙で苦い体験をしたフロリダの有権者達は、2004年の大統領選挙では、確実に自分の票が集計されるよう強い意気込みをもって投票にのぞんでいた。選挙当日に問題を体験せぬよう、有権者の5分の1に相当する200万人ほどが期日前投票を行った。また、投票率も格段に上がり、選挙当日の天候も良かったため、多くの浮動票が民主党に流れると予測されていた。もちろん、共和党陣営も積極的な選挙キャンペーンを展開したが、今回もフロリダでは民主党有利と考えるのが自然であった。
ところが、フロリダ州では予想外に5%以上の差を付けてブッシュ大統領がケリー候補を下した。一般的には、ケリー候補のテロ対策の姿勢が曖昧であったことや、ジェブ・ブッシュ州知事の人気がブッシュ票を稼いだと言われている。また、反カストロの立場をとる共和党を支持するヒスパニック系からの得票も大きかったとされる。
しかし、それにしてもなぜ接戦にならなかったのか? 予想外にフロリダでケリー票が伸びなかった理由は、電子投票システムによる疑惑だけではない。2000年の大統領選の時と同様に、黒人の投票権を剥奪する活動が熱心に行われたからであるとも言われている。
マイアミ・ヘラルド紙は、選挙権を回復した2,100人が、尚も犯罪者(選挙権剥奪者)リストに掲載されていることを発見した。また、サラソータ・ヘラルド・トリビューン紙によると、4万7千人以上の誤った犯罪者リストが作成され、その中で、共和党を支持する傾向の強いヒスパニック系はわずか61人であったのに対して、残りの大部分は民主党支持の傾向が強い無実の黒人達であったことを突き止めた。それに対し、フロリダ州政府は単純ミスと説明したが、その後、どのように訂正されたのかは明らかとなっていない。
このように不当に選挙権を剥奪された黒人達はフロリダ州だけで2・3万人に及ぶとされ、投票所に訪れても、犯罪者リストに名前があることを理由に、投票を拒否されていたのだ。

民主主義の無いアメリカ
日本のメディアを通して知る限り、平穏無事に選挙は行われたように見えた2004年の大統領選であったが、その背後では、様々な不正行為が行われてきていたのだ。ケリー民主党陣営は、今回の選挙に用立てた資金がまだ5千万ドルも残っているが、不思議なことに、まったくと言って良いほど不正行為の追及に動こうとしない。ブッシュ陣営との間に選挙をめぐって事を荒立てない密約でも交わされていたのだろうか? 極めて不可解である。
いずれにしても、このような選挙の現実を知ると、いつの時代の話かと思えてくる。自由と民主主義が誇らしげに叫ばれてきたアメリカで、民主主義の根本である公民権すら保証されていないのが現状なのである。まるで南北戦争当時の南軍が共和党、北軍が民主党のように思えてくる。
ところで、アメリカでは州毎に市民のIQ平均値を公表しているが、IQ上位十数州ではものの見事にケリー候補が勝利しており、IQの低い市民がブッシュ大統領に投票したというデータも現れている。そのためか、ケリー候補に投票した多くのアメリカ市民達は、今回の選挙結果を「アメリカの恥」と認識しているようだ。
11月5日付の新聞各紙によると、米大統領に再選されたブッシュ氏が米国時間3日に勝利宣言を行って以来、カナダ政府の移民局サイトへのアクセスが急増しているという。3日に過去最高のトラフィックを記録し、アメリカ人ユーザーによるアクセスはふだんの6倍に達したとカナダ通信が伝えている。アメリカからのアクセス件数は、合わせて11万5016件で、同日に記録したアクセス数全体の64%となった。市民および移民局の当局者がカナダ通信に語ったところでは、最も良く見られたページは、熟練労働者向けのオンライン自己評価フォームだった。ブッシュ大統領の再選に幻滅し、カナダへの移住を検討しているリベラル派アメリカ人によるアクセスだったと推測されている。
アメリカ国外の人間からすれば、今回の選挙結果を知り、アメリカ国民はなおもブッシュ大統領を選んだものと解釈するだろう。しかし、現実には、得票操作の影響で民意を反映しない結果であった可能性が高く、我々はアメリカ国民に対して、懐疑の念を持つべきではないのだろう。もちろん、必ずしもケリー候補の勝利が正しい訳ではないが、アメリカ市民も必死に世の中を変えるべく、今回の選挙にのぞみ、近年稀に見る高投票率となったのである。むしろ、今回の結果は、ごく限られた権力者による不正行為が蔓延った結果であり、アメリカ市民に対して同情心を抱くことが求められるのかもしれない。
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