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ハイジャック機からの電話の怪
(掲載未定)
バーバラ・オルソンからの電話
元検察官で、評論家として知られるバーバラ・オルソンさん(46)は、携帯電話で、司法省で働く夫(テッド・オルソン氏)にワシントン発ロサンゼルス行きアメリカン航空77便の機上から伝えてきた。
声は落ち着いていた。いったん電話を切り、二回目にかけてきた時に、複数の犯人が刃物で乗客らを脅し、客室の後部座席へ移るよう指示したことを知らせてきた。「何をすればいいのだろう」。夫への問いかけが最後の電話になった。

これはCNNが事件翌日の9月12日午前2時過ぎ(事件が起こってから約17時間後)に報じたものである。著名人がハイジャック機で亡くなるばかりか、機内の様子を伝えた貴重な情報として、このニュースはまたたくまに世界中を駆け巡っていった。
これだけのスクープを取り上げたCNNであったが、事件後しばらく時間が経っても、夫のテッド・オルソン氏とのインタビューは決して放映されることがなかった。なぜであろうか?
そもそもおかしなことがあった。もし貴方が最愛の妻を無くしたとしたら、事件当日はショックでインタビューすら受ける気持ちになれないだろう。実際、テッド・オルソン氏が職場に復帰したのは事件の6日後であった。12日の午前2時過ぎにニュースになっているということは、当日の11日にCNNは取材を終えていることになる。このようなことはあり得るだろうか?
テッド・オルソン氏は、事件後も妻の死に関して言及することを避けてきている。事件直後にショックを受けている際には、口を開くことが出来たが、時間が経つとしゃべれなくなる心理は普通のことであろうか?
実は、事件の6ヵ月後にテッド・オルソン氏はロンドン・テレグラフのレポーターにインタビューを受けている。アメリカ国内ではなぜか報道されることが無かったが、テッド・オルソン氏はさらなる詳細を次のように語っている。
「彼女は電話してくるのにトラブっていた。というのは、彼女は携帯電話を使っていなかったからです。彼女は座席にすえつけられた電話を使っていました。彼女はコレクトコールをしてきたので、おそらく財布を持っていなかったんでしょう。それで、司法省に掛けようとするのは、簡単なことじゃありません。・・・(中略)・・・彼女は、パイロットに何と言ったら良いか、自分に何が出来るか、どうしたら止めることができるのかを知りたがった。」
ここまで語って、ようやくテッド・オルソン氏の証言が虚偽であったことが判明した。
アメリカン航空77便で使用されるボーイング757には、各座席に電話が取り付けられている。使用するときは、ただ受話器を持ち上げて、交換手に繋げる。同じ機内で、他の座席に居る人と話をする際は無料である。しかし、機内ではなく、外のネットワークにアクセスするためには、最初にクレジット・カードを電話機に通さねばならない。しかし、テッド・オルソン氏によれば、妻のバーバラはその時クレジット・カードを持っていなかったのだ。設置された電話を利用するためには、セットアップ料に$2.50、1分間$2.50の通話料を要するが、それはクレジット・カードでのみ支払い可能である。
テッド・オルソン氏が勘違いをして、妻のバーバラは他の乗客からクレジット・カードを借りたのだろうか? いや、それはあり得ないことである。
なぜなら、クレジット・カードが受け入れられた段階で、どこの番号にも好きなだけ通話可能となる訳で、わざわざコレクトコールを利用する必要は生じないからである。
テッド・オルソン氏の証言は、本人の判断による狂言だったのか、誰かに頼まれて行った狂言だったのかは定かではない。しかし、テッド・オルソン氏が事件当日の妻の様子をCNNに伝えたこと、その後のテレビ等の取材を避けてきたこと、ロンドン・テレグラフのレポーターに証言した内容もアメリカ国内では報道されなかったこと等の理由が説明されることとなったのである。

携帯電話の通話料の謎
9.11事件当初、バーバラ・オルソンさん以外にも、ハイジャックされた飛行機の中から乗客が機内の様子を携帯電話で家族に報告していた例はいくつか報道されている。
ニューアーク発サンフランシスコ行きユナイテッド航空93便は、ピッツバーグの南東約130キロの森に墜落した。このユナイテッド航空93便に搭乗していたニュージャージー州のインターネット会社役員、ジェレミー・グレッグさん(31)は、地上の妻リスベスさんと携帯電話で話をしており、二人の会話の内容も大変注目を集めた。まずは、その時の状況を紹介しよう。
ジェレミーさんは、他の乗客3人と「爆弾を持っている」と脅す犯人たちから飛行機を奪還する計画を立て、「絶望的な作戦だが・・・」と打ち明けた。約20分間の会話の末、リスベスさんは「あなた、(奪還作戦を)やらなければいけないわ」と返事をした。
機内では、ナイフなどで武装したアラブ系の男三、四人が客室乗務員を次々に刺し、爆弾だという赤い箱を手に、操縦室を占拠していた。
同機の乗客たちは携帯電話で家族や親類に連絡を入れ、テロ事件のことを知らされ、自分たちの飛行機も先の三機と同じ運命をたどることを理解していた。
「何かをしなければ。自分たちで操縦席を取り戻すことしかない」
「いいかみんな、行くぞ」
ジェレミーさんら乗客が席を立った後も、電話はつながったままだった。しばしの静寂の後、叫び声が聞こえ、再び静寂が訪れた。次の叫び声の直後、電話は途絶えた。
同機は、ニューヨーク郊外を離陸して約一時間半後の午前10時6分に墜落した。

さて、これは、バーバラ・オルソンさんの時と異なり、携帯電話を通した会話からもたらされた機内の状況であった。ジェレミーさんに限らず、他にも何人もの乗客が携帯電話で地上の家族や友人達と会話を交わしていたことが分る。
ここで素朴な疑問が生まれる。一体、携帯電話を使って本当に機内から地上の相手と会話することが出来るのであろうか?
そもそも携帯電話の電波は500メートルくらいしか飛ばないはずである。携帯電話はセルラーホンとも呼ばれており、500メートル半径のセルと呼ばれる地域ごとに受信アンテナと通信している。これにより、携帯電話の出力電波の強度を小さくおさえて、電池の寿命を延ばしている。そのため、数千メートルの高度にあった航空機の室内からの携帯電話での通話ができる可能性は小さい。また、携帯電話の回線をセルから次のセルに切り替えるハンドオーバのスピードは航空機のスピードで移動する移動体には対応できないと言われている。
市内でも広い公園に行ったりするだけで通話できなくなる。地上ですら簡単に通話不能の区域に行くことは可能であるのだが、上空での通話がどの程度成功したのか怪しいところである。特に、ユナイテッド航空93便はペンシルベニア州の閑散とした林の中に墜落したのである。都会の上空を低空飛行していたのなら、通話は可能であったかもしれないが、何とも難しい状況であったのは間違いないだろう。
実際、携帯電話を掛けた人物に送られてきた電話会社の請求書には通話の記録がなかったと言われている。携帯電話による通話が成立しなかったからこそ請求書にまったく記載されていなかったと考えるのが自然であろう。
このような情報を米当局が伝えたことは、乗っ取られた航空機の乗客が携帯電話で伝えたとされる情報は、犯人がアラブ系であったというデマを流すための捏造であったのだろうか? 
しかし、アメリカ在住の私の友人で、使用禁止の携帯電話を機内から使用して、地上の相手と会話を交わした者が居る。その事実を考えるならば、状況さえ整っていれば、携帯電話での通話は可能であるとも考えられる。
この謎は、やはり米当局に説明してもらうしかないのかもしれない。
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